1999 Fiscal Year Annual Research Report
難聴患者の外リンパ液を用いたPCR法によるウイルス性内耳炎の発症メカニズムの解析
Project/Area Number |
10671592
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Research Institution | Osaka University Graduate School of Medicine |
Principal Investigator |
田村 学 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (50273644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 勝美 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40243224)
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Keywords | ウイルス性内耳炎 / 麻疹ウイルス / RT-PCR法 / 難聴 |
Research Abstract |
ウイルス性内耳炎によると考えられる高度感音難聴の原因ウイルスとして現在まで23種以上のウイルスが報告されている。麻疹ウイルス感染は、これらのウイルス感染の一つとして重要であり、また、耳硬化症患者の鐙骨底板から本ウイルス遺伝子が検出されることが報告されている。我々は、人工内耳埋め込み術、及びアブミ骨手術施行時に採取した微量の外リンパ液を用いて高感度のRT-PCR法によりウイルスの検出を行った。外リンパ液からRT-PCRによりcDNAを合成し麻疹ウイルスに特異的な2組のプライマーを用いてnested PCRを行い、PCR産物をダイレクトシークエンスすることにより既存の麻疹ウイルスとの比較を行った。結果を以下に示す。1.両側高度感音難聴患者では5例中4例において麻疹ウイルスのNP遺伝子が検出され、これまでのEdomonston株、CAMワクチン株と比較すると核酸変異部位は7ヶ所あった。このうち2ヶ所はアミノ酸配列の変異を伴っていた。2.耳硬化症患者では3例中3例において麻疹ウイルスのNP遺伝子が検出され、これまでのEdomonston株、CAMワクチン株と比較すると核酸変異部位は3ヶ所あった。このうち1ヶ所はアミノ酸配列の変異を伴っていた。3.これらの患者末梢血単核球からは麻疹ウイルスのNP遺伝子は検出されなかった。 これまで亜急性硬化性全脳炎(SSPE)でない人でのautopsyの際の脳内からもPCR法にて麻疹ウイルスが検出され持続感染することが示されているが、今回の結果より、内耳に親和性の強いウイルス株の存在が示唆され、内耳炎または耳硬化症の難聴に関与する可能性があると考えられる。
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