1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10671630
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 俊明 東北大学, 医学部, 助教授 (90191858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 浩史 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (40302088)
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Keywords | 虚血性網膜疾患 / サイトカイン / 脳由来神経成長因子(BDNF) / 虹彩色素上皮細胞(IPE) / 遺伝子導入 / アマクリン細胞 / 網膜下移植 |
Research Abstract |
虚血性網膜疾患の治療はさまざま試みられているが、いまだに有効な治療方法がないといえる。我々はこれまで虚血性疾患の代表である糖尿病網膜症をはじめさまざまな眼内増殖疾患の硝子体のアミノ酸代謝や、酵素反応の変化、さらに眼内の増殖膜に発現するサイトカイン遺伝子の変化を確認してきた。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などは、加齢黄斑変性の増殖膜などに有意に増加していることが判明したが、それ以外に各種増殖膜に脳由来神経成長因子(BDNF)など様々のサイトカインが多数発現していることが判明した。また、網膜虚血の実験よりBDNFなどが神経節細胞やアマクリン細胞の保護効果があることが予測されたため、BDNFcDNAを虹彩色素上皮細胞(IPE)に導入しBDNFの発現を高めた状態でこのIPEが他の細胞を虚血より保護する効果があるかどうかを確認した。細胞への導入にはリボフェクション法を利用した。ベクターのジェネティシンを利用して導入細胞を選択し、遺伝子内に安定に導入された細胞を選択した。この方法で選択された細胞は継代培養を重ねても、BDNF遺伝子発現ならびに蛋白の発現に差がなく、コントロールよりも有意に多く発現していた。この細胞を培養し、ラット網膜より採取したアマクリン細胞とともに培養するとBDNF遺伝子導入をしていない培養細胞よりアマクリン細胞の細胞死が有意に抑制されることも判明した。さらに、遺伝子導入細胞をラット網膜下に移植後、虚血を作成した実験においては、遺伝子導入した細胞の移植が網膜内層の保護効果が強い傾向が見られた。移植には常に拒絶反応がつきものであるが、今回の実験に利用したIPEの目的は最終的に自己の細胞を利用して拒絶反応を抑制しようというもので、我々がこれまで加齢黄斑変性の治療に対して、実際に最近臨床応用まできたものである。したがって、将来遺伝子治療をめざす場合の重要なステップにもなっている。
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Research Products
(2 results)