1998 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎に合併する網膜剥離・白内障の発生機序に関する研究
Project/Area Number |
10671654
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
樋田 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (40129622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺木 祐一 杏林大学, 医学部, 講師 (10188667)
藤原 隆明 杏林大学, 医学部, 教授 (20096259)
塩原 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (10118953)
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 網膜剥離 / 白内障 / サイトカイン / IL-4 / Interferon-γ |
Research Abstract |
アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離に関する全国調査(33施設)結果をまとめ(日眼学会誌103:40-47,1999)、原因検索と患者の指導に関して、皮膚科領域とともに今後の共同研究の重要性を啓蒙した。本調査によると網膜剥離は年々増加傾向にあり、同時期の網膜剥離全体症例に占める割合は2.3%であった。東京地区に限ると4.7%で有意に都会で高かった。眼瞼を叩くなどの行為が発症要因として重要であること、網膜剥離や網膜裂孔の臨床的特徴は従来の特徴を確認する結果であった。初回手術としてバックル手術は78%、硝子体手術が22%に施行され、初回および最終復位率は75.3%、92.6%と不良であった。 一般にアレルギー炎症は、IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-10などを産生するTh-2細胞が重要と考えられているが、細胞傷害に直接的に影響するIL-2,Interferon-γ,TNF-βなどを産生するTh-1細胞の関与も無視できない。初回手術として硝子体手術を適応した症例について炎症細胞腫の検出を目的に、炎症細胞が産生するサイトカインをフローサイトメトリーを用いて検索した。まず、4例を対象に硝子体手術時の硝子体検体採取の方法を検討したところ、硝子体手術の灌流開始前に硝子体腔中央より硝子体カッターで約1cc採取可能であり、適応した4症例中3例で多数の細胞成分を認めた。残る1例はほとんど細胞が観察できなかった。細胞を認めた3例のうち2例はリンパ球主体、1例は好中球および色素上皮細胞、繊維細胞主体であった。フローサイトメトリーでサイトカインを検索したところIL-4,Interferon-γが検出され、これはTh-2細胞とTh-1細胞の混在を示した。このプロフィールは同患者の末梢血液中のプロフィールと異なり、眼組織という局所に選択的あるいは特徴的に存在する炎症像と考えられた。しかし、本症例の問題点は、網膜裂孔の大きさや時間的経過、網膜色素上皮細胞によるサイトカインの関与のバリエーションも広く、さらに症例数を増やし再現性を検討しなければならない。そして、ステロイドなどの治療歴との比較検討を行い、本疾患の発症機序や治療に結びつけることが平成11年以降の研究計画である。
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