アトピー性皮膚炎に合併する網膜剥離・白内障の発生機序に関する研究

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10671654
• Research Institution: Kyoritsu University of Pharmacy
• Principal Investigator: 樋田 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (40129622)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 寺木 祐一 杏林大学, 医学部, 講師 (10188667) ; 藤原 隆明 杏林大学, 医学部, 教授 (20096259) ; 塩原 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (10118953)
• Keywords: アトピー性皮膚炎 / 網膜剥離 / 白内障 / 硝子体手術 / リンパ球 / 平滑筋アクチン

Research Abstract

アトピー性白内障に網膜剥離の合併は高頻度である。その特徴を把握し予後を改善するために、アトピー性白内障手術例における眼底所見について29例36眼を対象に検討した。約90%に眼底異常所見を認め、約70%は硝子体基底部付近の異常であった。網膜裂孔は約50%にあり、そのうち約60%で網膜剥離を合併していた。網膜剥離眼のうち約50%で毛様体上皮裂孔が認められた。網膜剥離眼のうち術前に網膜裂孔を発見できたのは約20%と少なく、白内障術中眼底検査の重要性が再認識された。
アトピー性網膜剥離の病因を探るために、手術で硝子体液を採取しフローサイトメトリーによるサイトカイン産生細胞の解析を試みたが、細胞が少ないことと、症例が長期間の網膜剥離を有しているために二次的変化が強く、他の網膜剥離と異なや炎症性因子の把握が困難であった。硝子体液を採取する症例がすでに手術既往眼も多く、むしろ炎症性疾患の背景を有するかどうか検討するために、アトピー性網膜剥離で強膜バックリングを有するものやアトピー性白内障手術例の症例の結膜を採取して、炎症性変化合併の有無を組織学的、免疫組織学的に検討する方針に変更し検討した。網膜剥離例で手術既往がなくても結膜にリンパ球を主体とした細胞浸潤がみられた;しかし、細胞浸潤が多いものと臨床像の程度の関係が現状では明らかにできなかった。結膜のIL-6などの炎症性サイトカインの染色性はコントロールと有意な差が得られなかった。他のサイトカインについて検討中である。
アトピー性白内障手術で採取した白内障前嚢を病理組緯学的に検討した結果、前嚢下混濁の線維性混濁周囲の細胆密度の低下と線維性混濁領域での細胞の凝集と重層化を観察した。免疫組織学的にその部でのα平滑筋アクチンの発現がみられた。