2000 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニックマウスを用いたPNEとヒルシュスプルング病の遺伝子関連の解析
Project/Area Number |
10671665
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金子 道夫 筑波大学, 臨床医学系, 教授 (60152807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 芳夫 名古屋大学, 医学部, 助教授 (80201242)
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Keywords | トランスジェニックマウス / アデノウィルス12型 / E1 / PNET / cyclinD1 / EWS / ETS / キメラ遺伝子 |
Research Abstract |
ヒトレニンプロモーターとAdenovirus(Ad)12型のE1A・E1B融合遺伝子をヘテロに持つトランスジェニック(TG)マウスでは、88%もの高頻度で体の様々な部位に特異的にPNETが発生する。AdE1A、E1BタンパクはそれぞれpRB、p53と結合してその作用を阻害する。細胞周期のG1で働くcyclinD1はCdk4と結合してpRBをリン酸化し、G1/S期移行を促進する。また、p21遺伝子はp53の転写誘導を受け、cyclinD1/Cdk4複合体に結合することでキナーゼ活性を阻害し、細胞をG1期で停止させる。E1A、E1B遺伝子を高発現している我々のTGマウス発生腫瘍と、マウス神経芽腫株細胞C1300のp21/GAPDおよびcyclinD1/GAPD遺伝子発現比をreal time定量RT-PCR法を用いて比較した結果、p21/GAPD発現比はC1300:TGマウス腫瘍で1:0.54であったが、cyclinD1/GAPD発現比は1:0.032とTGマウス腫瘍で極めて低く、正常脳と変わらない発現レベルであった。この結果から、cyclinD1-pRBのシグナル経路はpRBだけの変異でもはや機能しなくなると考えられた。ヒトのPNET/Ewingでは、特異的なt(11;22),t(21;22),t(7;22)あるいはt(17;22)の染色体転座の結果、EWS/FLI-1,EWS/ERG,EWS/ETV1あるいはEWS/E1A-FのEWS/ETS farnilyキメラ遺伝子が形成される。我々はRT-PCR法によりPNET特異的なmRNAを迅速に検出し、横紋筋肉腫など他の軟部悪性腫瘍との鑑別診断を行った。また、新鮮凍結材料だけでなく、パラフィン包埋腫瘍組織からもRNAを抽出し、軟部悪性腫瘍特異的なキメラ遺伝子を遡って検出する方法を確立した。TGマウス発生腫瘍についてもPNET/Ewing肉腫特異的なキメラ遺伝子の検索を行ったが、いずれの融合転写産物も検出されなかった。さらに、ノ-ザンブロット法でTGマウス腫瘍におけるEWSの変異をRNAレベルで調べたが異常はなく、Ad12型E1遺伝子を組み込んだ我々のTGマウスに発生するPNETでは、ヒトのPNET/Ewing肉腫で見られるEWS遺伝子とFLI-1などETS farnily遺伝子の融合の可能性は低いと考えられた。
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Research Products
(1 results)