1998 Fiscal Year Annual Research Report
ケロイドにおける受容体型チロシンキナーゼの発現と病態解析
Project/Area Number |
10671682
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
村上 隆一 長崎大学, 医学部・附属病院, 講師 (70239507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 俊一 長崎大学, 医学部, 教授 (30200679)
藤井 徹 長崎大学, 医学部, 教授 (60136661)
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Keywords | ケロイド / 受容体型チロシンキナーゼ / IGF-I receptor |
Research Abstract |
ケロイドは細胞外マトリックスを過剰産生し健常皮膚に拡大する原因不明の良性腫瘍疾患である。ケロイド腺維芽細胞ではサイトカインに対する反応性の違いが報告されており、その成因にもサイトカインシグナルの関与が示唆される。そこでケロイドで重要なサイトカインレセプターを固定するため、ケロイドおよび正常皮膚の線維芽細胞から抽出したRNAで受容体型チロシンキナーゼ遺伝子の共通配列がある領域にプライマーを設定したRT-PCRを行いその産物の塩基配列を決定後、Gene Bankに登録されている遺伝子とホモロジー検索を行い、受容体型チロシンキナーゼの発現解析を行った。ホモロジー検索では既知8種類の受容体型チロシンキナーゼが同定され、うちPDGFRは正常・ケロイドいずれの線維芽細胞でも多く検出され、IGF-IRはケロイドでのみ多く検出された。ケロイドで発現増加のみられたIGF-IRについては免疫染色を行い、蛋白レベルでも発現量の増加を確認した。次にIGF-Iシグナルの機能解析としてWST-1 assayで細胞増殖作用を、またinvasive assayにて周囲への浸潤作用を検討した。WST-1 assayではIGF-I添加による明らかな増殖作用はみられなかったものの、invasive assayでは抗IGF-IR中和抗体の添加により浸潤の抑制効果が認められた。 今回ケロイド線維芽細胞ではIGF-IRの発現量が増加していることが初めて確認され、そのシグナルは周囲への浸潤に関与している可能性が示唆された。以上の結果は第7回日本形成外科学会基礎学術集会で発表し、The American Journal of Pathologyに投稿、March 1999,Vol.154,No.3に掲載予定である。今後そのシグナルの解析を進めることによりケロイドの病態の解明あるいは新たな治療方法の研究開発につながるものと考えられる。
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[Publications] Yoshimoto H,Fujii T,Yamashita S,et al: "Overexpression of Insulin-like Growth Factor-1 (IGF-1) Receptor and the Invasiveness of Cultured Keloid Fibroblasts" The American Journal of Pathology. (in press).