2000 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的アプローチによる口腔内細菌叢の動態調査
Project/Area Number |
10671699
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
福井 一博 岡山大学, 歯学部, 教授 (70034171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新垣 隆資 岡山大学, 歯学部, 助手 (40294417)
谷本 一郎 岡山大学, 歯学部, 助手 (00280686)
井上 哲圭 岡山大学, 歯学部, 助手 (20223258)
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Keywords | 細菌叢 / 16SrDNA / PCR / う蝕 / 歯周病原細菌 |
Research Abstract |
1 前二年のPCR-16SrDNA解析より、う蝕部位においてもその進行の程度により細菌叢が大きく異なる結果を得た。また象牙質に達する重度のう蝕であっても、患者により検出される細菌に大きな違いがあることがわかった。最終年度である本年度は若干の解析を加えるとともに、う蝕をはじめとする細菌性口腔疾患の全体像の掌握を目的に、蓄積された解析結果より研究の総括を行った。 新たな解析からもこれまで同様、多様な細菌遺伝子が検出された。結果をまとめると、培養に依存しない遺伝子学的手法により検出された細菌は、これまで口腔よりの分離報告例の少ないもの、あるいはデータベースに登録された既知細菌と相同性の低いものを含め極めて多様であった。また、かなりう蝕の進行した試料から検出された細菌群は,Streptococcus mutnasやS.sobrinusといったう蝕原生の強いものではなかった。 う蝕の発生機序は、口腔内細菌による糖の利用に伴う酸産生によるものとの理解が浸透しているが、そこにはこれまで考えられていた以上に様々な細菌が関与している可能性が示唆された。多因性、複合性疾患である歯周病に代表されるよう、約200種に及ぶ細菌が生息すると言われる口腔領域の細菌性疾患を考える際には、広く細菌叢全体を視野に入れる事が必要になるものと考えられる。今後も様々なう蝕細菌叢の解析、データの蓄積に努めたい。 2 特定細菌の検出を目的に、実習学生を対象に歯周病原細菌のPCR検出を行った。3年度にわたり、異なる学生集団について調査を行ったところ、培養法では分離できなかった若年性歯周病原細菌Actinobacillus actinomycetemcomitansが20〜30%という比較的高い検出率を示した。 以上のように、分子生物学的アプローチによる研究手法は口腔細菌叢についての新たな知見をもたらした。遺伝子学ならびに分子系統学的解析手法は、今後ますます口腔内細菌叢の解析に有効な手段として活用されてゆくものと期待される。
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Research Products
(1 results)