1999 Fiscal Year Annual Research Report
歯根膜の恒常性維持に関わるマラッセ上皮遺残のシグナル伝達の解明
Project/Area Number |
10671716
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
井上 孝 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (20125008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安彦 善裕 北海道医療大学, 歯学部, 助教授 (90260819)
下野 正基 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00085771)
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Keywords | マラッセの上皮遺残 / アポトーシス / bcl-2 / PCNA / 透過型電子顕微鏡 / シグナル伝達 / 基底膜 / 歯原性上皮 |
Research Abstract |
マラッセ上皮遺残のシグナル伝達を解明する目的で、平成10年度は、ヘルトヴィッヒの上皮鞘の断裂のメカニズム、マラッセの上皮遺残の増殖のメカニズムを明らかにした。平成11年度には以下の結果を得た。ブタの永久歯を用いて、ヘルトヴィッヒの上皮鞘が断裂してマラッセの上皮遺残になり、歯小嚢由来の間葉系細胞がセメント芽細胞に分化するメカニズムを透過型電子顕微鏡ならびにアポトーシス抑制遺伝子bcl-2、増殖細胞核抗原PCNAおよびアメロジェニンを用いた免疫組織化学染色により検討した(43回、日本歯周病学会、1999)。その結果、電子顕微鏡的には、ヘルトヴィッヒの上皮鞘は完全に基底膜にて囲まれた内外二層性の上皮索として観察され、歯髄の細胞は象牙芽細胞に分化する時に、基底膜を介してシグナルの伝達が起こると考えた。一方、セメント質形成に関しては、電顕的に外側基底膜が破れる部位に歯小嚢の間葉系細胞の侵入が見られることと、PCNA陽性細胞が上皮鞘断裂部に近接する歯小嚢細胞に陽性像が観察されたことから、上皮鞘の断裂後にセメント芽細胞への分化が起こることは確実であるが、bcl-2はHertwig上皮鞘および断裂したマラッセの上皮遺残細胞の細胞質に染色像が観察され、上皮にはアポトーシスが起こらないことが示唆されるが、上皮の断裂はアポトーシス以外の方法で行なわれると思われた。上皮鞘が断裂すると、間葉系の細胞が内側エナメル上皮に接触可能となり、電顕的に両細胞間にギャップ結合様の細胞間結合装置が見られたことから、それを通じて間葉系の細胞が内側エナメル上皮細胞からなんらかのシグナルを受け取りセメント芽細胞に分化すると考えた。一方、若年者に生じた歯牙腫や歯原性腫瘍から歯原性上皮とセメント質形成の関係を検索したが(47Th.JADR,1999)、これらの腫瘍でも歯原性上皮の存在により硬組織の形成が左右される可能性があることが示唆された。すなわち、歯原性上皮が歯髄様組織と接すると象牙質が形成されているが、歯原性腫瘍の中にセメント質が見られない理由として、歯小嚢由来の細胞の存在が無いことが考えられた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 井上 孝: "口腔粘膜病変とメルケル細胞に関する免疫組織化学的研究"歯科基礎医学会雑誌. 41・2. 108-112 (1999)
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[Publications] 細矢由美子: "象牙質形成不全を伴う遺伝性エナメル質形成不全症"小児歯科学雑誌. 37・3. 631-641 (1999)
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[Publications] Y. Abiko: "Pattern of expression of beta-defensins in oral S.C.C."Cancer Letters. 143. 37-43 (1999)
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[Publications] Y. Morohoshi: "Influences of 4META/MMA-TBB adhesiveresin"The Bull. Tokyo Dent. Coll. 40・3. 129-138 (1999)
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[Publications] 高野伸夫 (共著): "口腔病変イラストレイテッド"医歯薬出版株式会社. 214 (1999)