1998 Fiscal Year Annual Research Report
プロトンATPase阻害による破骨細胞アポトーシスの機序の解明
Project/Area Number |
10671729
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
岡橋 暢夫 国立感染症研究所, 口腔科学部, 主任研究官 (40150180)
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Keywords | 破骨細胞 / アポトーシス / プロトンATPase / caspase / リポ多糖 |
Research Abstract |
破骨細胞は生体内で骨吸収を司る主要な細胞である。これは、多核の巨大細胞で、単核の前駆細胞が分化、融合して形成されると考えられている。破骨細胞による骨吸収は、破骨細胞の分泌するプロトン(水素イオン)と各種の加水分解酵素が関与している。破骨細胞のプロトン分泌は、カーボニックアンヒドラーゼとプロトンATPaseによって担われている。最近、我々は、歯周病細菌による骨吸収の細胞生物学的研究を進めていく間に、プロトンATPaseを阻害すると破骨細胞が急速に死滅することを見い出した。本研究は、このプロトンATPase阻害剤による破骨細胞の死滅の機序を明らかにしようとするものである。 マウス骨髄細胞からin vitroで破骨細胞を形成させ、これをプロナーゼ処理で精製して以下の実験に用いた。精製破骨細胞をプロトンATPase阻害剤であるconcanamycinAあるいはbafilomycin存在下で培養すると、破骨細胞の酸性小胞のpHが上昇し、数時間のうちに死滅を始める。プロトンATPase阻害剤存在下で培養を続けると、破骨細胞は18時間で90%以上が死滅した。蛍光色素で細胞核を染色すると、細胞核の萎縮、断片化が認められ、さらにFITC-TUNEL法で検討すると細胞核においてDNAの断片化が起こっていることが分かった。すなわち、破骨細胞はプロトンATPase阻害剤によってアポトーシスを起こすことが明らかになった。破骨細胞に対して生存維持作用を発揮するIL-1,TNF-aなどを添加しても、プロトンATPase阻害剤によるアポトーシスを抑制することは出来なかった。歯周病細菌のLPSも同様に破骨細胞の生存を延長することが見い出されたが、これもプロトンATPase阻害剤によるアポトーシスを抑制することは出来なかった。アポトーシスにはcaspaseという一群のシステインプロテアーゼが密接に関与していることが知られている。そこで、プロトンATPase阻害剤で処理した破骨細胞においてcaspaseの活性を測定したところ、数時間の間にcaspase-1とcaspase-3の活性が急激に上昇することが分かった。歯周病細菌のLPSは破骨細胞の形成を促進するが、プロトンATPase阻害剤の存在下では、LPSによる破骨細胞の形成が全く起こらなかった。一方、骨の形成を担う骨芽細胞はプロトンATPase阻害剤を添加して培養しても生存していた。以上の結果から、プロトンATPaseを阻害することにより、破骨細胞のアポトーシスが誘発されるだけでなく、破骨細胞の形成も抑制されること、骨芽細胞に対してはあまり影響がないことなどが示唆される。
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[Publications] Okahashi,N., et.al.: "Specific inhibitors of vacuolar H-ATPase trigger apoptotic cell death of osteoclasts" J.Bone Miner.Res.12. 1116-1123 (1997)
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[Publications] Akifusa,S.,et.al.: "Increase in Bcl-2 level promoted by CD40 ligation correlates with inhibition of B cell apoptosis induced by vacuolar type H-ATPase inhibitor" Exp.Cell Res.238. 82-89 (1998)
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[Publications] Okahashi,N.,et.al.: "Caspases(interleukin-1b converting enzyme family proteases)are involved in the regulation of the survival of osteoclasts" Bone. 23. 33-41 (1998)
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[Publications] Ohguchi,M.,et.al.: "Activin A regulates the production of mature interleukin-1b and interleukin-1 receptor antagonist in human monocytic cells" J.Interferon Cytokine Res.18. 491-498 (1998)
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[Publications] Ohguchi,M.,et.al.: "Actinobacillus actinomycetemcomitans toxin induces both cell cycle arrest in the G2/M phase and apoptosis" Infect.Immun.66. 5980-5987 (1998)
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[Publications] Ueda,N.,et.al.: "Involvement of prostaglandin E2 and interleukin-1a in the differentiation and survival of osteoclasts induced by lipopolysaccharide from Actinobacillus actinomycetemcomitans Y4" J.Periodont.Res.33. 509-516 (1998)