1999 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの脳機能に及ぼす咀嚼低下の影響-記憶能力発達への影響
Project/Area Number |
10671747
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
村井 繁夫 岩手医科大学, 歯学部, 助教授 (70005057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 弘子 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (30124902)
増田 義勝 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (50048386)
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Keywords | そしゃく量 / マウス / 学習・記憶能力 / 粉末飼料飼育 / バルク飼料飼育 / 脳機能 / 行動学的分析 / 神経化学的分析 |
Research Abstract |
本研究では、咀嚼量を一定期間持続的に変化させた場合、マウス中枢神経系の機能に何らかの影響が発現するかを検討した。咀嚼量を強制的に変えるために、実験群としては、通常の固形飼料飼育の普通食群、咀嚼量が少ない粉食群、咀嚼量が多いバルク群(非栄養素であるセルロースの混入により、より多くの咀嚼量を必要とするバルク固形飼料で飼育された)の3群を用いた。中枢神経系の機能指標としては、行動学的な記憶能力の測定と記憶機構と関係が深い脳領域である海馬と大脳皮質のアセチルコリン(ACh、記憶に関与する中枢神経化学伝達物質)濃度の測定を行った。 本研究で得られた結果は以下のとおりである。(1):通常の短期普通食群と比較して、短期粉食群の記憶想起能力は有意に低い。本結果は、幼若期において咀嚼量が少ない場合には,すでに脳に固定されている記憶を思いだす能力が、普通食群より低下している可能性を示唆している。(2):通常の短期普通食群と比較して、咀嚼量が多い短期バルク食群の多重迷路学習能力は有意に高い。本結果は、咀嚼量を通常よりも増加させた場合には、複雑な学習内容を消化する能力が、対照群よりも高い可能性を示唆している。(3):一方、長期間飼育した場合には、短期間飼育実験で得られた有意な差が認められない。本結果は、成長期に認められた能力の違いが成熟後には消失する可能性を示唆している。(4):短期間飼育(1ヶ月)および長期間飼育(4ヶ月)とも、咀嚼量の相違は海馬と大脳皮質のACh濃度に影響を及ぼさない。 本研究はマウスで行われたもので、現段階ではヒトに対して直ちに外挿しうる結果ではない。しかし、マウスとはいえ、成長期における咀嚼量の多少が、中枢神経系の機能発達に対して、動物実験からでも測定しうる強さの影響を及ぼした結果に関しては、今後さらに研究を行う必要があると考える。
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