Research Abstract |
本研究では,基準点となる球の中心を計測する必要性から,より広範な計測形態への応用が可能なタッチプローブ(先端部を直径0.5mmの球型)を用い,三次元座標測定機トライステーション600(ニコン)を使用することを検討した。座標系は,上顎無歯顎模型(402U,ニッシン)口蓋の3点に付与した球形部(直径4mm)の中心を用いて設定した。各座標系は,3点を通る平面をX-Y平面,後方の2点を通る直線と平行にX軸,3点を通る円の中心点を原点として設定した。計測点は,直径2mmの半球形の窪みとして設定した。上顎総義歯試料の義歯粘膜面では,11箇所,人工歯では5箇所(中切歯,左右の第一小臼歯,第二大臼歯)に付与した半円の窪みの評点を測定した。本法での模型及び人工歯上の計測値の測定精度は,粘膜面上でX軸方向が5.6μm,Y軸方向が2.9μm,Z軸方向が4.7μm,人工歯上でX軸方向が5.6μm,Y軸方向が3.7μm,Z軸方向が7.5μmとなり,計測に充分な精度が得られた。測定時期は,作業用模型,ロウ義歯,重合直後,水中保管1日後,水中保管1週間後とした。 多様な形態を呈する無歯顎高齢者への義歯の寸法精度を検討するために,上顎無歯顎顎堤で,顎堤弓がU字形で,歯槽堤の高さを高,中,低に変化させた模型を作製した。これらの模型を規準として,総義歯形態の試料を,湿熱の加熱重合法(JIS規格に準じる)およびマイクロ波重合法を用い作製した。 本研究の結果,上顎総義歯の重合後の変形には,いずれの重合方法においても各部の厚さが大きく影響しており,臨床においては,口蓋の高さよりも顎堤の吸収の程度によって,より大きな影響を受けることが推察された。またマイクロ波重合法では湿熱の加熱重合法に比べ,床粘膜面の重合に伴う変形が小さく,また顎堤条件の変化による影響も小さいことが明らかとなった。
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