1999 Fiscal Year Annual Research Report
イチイ科由来アルカロイド・タキリールによる多剤耐性口腔癌細胞のアポトーシス誘導
Project/Area Number |
10671881
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
尾崎 輝彦 広島大学, 歯学部, 助手 (60243581)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 哲治 広島大学, 歯学部, 教授 (00169153)
虎谷 茂昭 広島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (90172220)
|
Keywords | タキソール / 耐性癌 / 扁平上皮癌 / アポトーシス / シスプラチン / アドリアマイシン |
Research Abstract |
口腔領域に発生する悪性腫瘍の大多数を占める扁平上皮癌に対して、従来より外科治療法、放射線療法および化学療法が行われてきた。しかし癌化学療法において、一つの抗癌剤に耐性を獲得した癌細胞は、他の抗癌剤のみならず放射線治療にも抵抗性を示す交叉耐性能を獲得することはよく知られている。日常臨床において、抗癌剤、放射線治療に耐性を示す口腔癌患者の救命には不可能に近く苦慮するところである。最近開発されたタキソールは、細胞分裂期にある癌細胞の微小管の蛋白重合を促進し、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を示す。そのため従来の抗癌剤の作用機序と全く異なることから、従来の抗癌剤に耐性を示す癌細胞に対して抗腫瘍効果を得られることが示唆されている。 本研究ではヒト口腔由来扁平上皮癌細胞、(SCC)、ヒト唾液腺由来腺癌細胞(SAC)および正常細胞としてヒト線維芽細胞、臍帯血管内皮細胞を用いてタキソール(TXL)、シスプラチン(CDDP)およびアドリアマイシン(ADR)に対する抗腫瘍作用について検討した。その結果、ADRに対してSCCは、SACに比較して高い感受性を示した。一方、TXLとCDDPではSCCに比較してSACに強い殺細胞作用を示すことが示唆された。これらの抗癌剤は正常細胞に対しても癌細胞と同等の殺細胞作用を示した。また培養細胞の倍加時間と抗癌剤の感受性の関連を検討すると、CDDPでは正の相関を認めたが、TXLとADRでは相関がなかった。 ヒト外陰部由来扁平上皮癌細胞A431のCDDP耐性株であるA431#4は、親株に比較してCDDPとADRに対しては3.5倍の耐性を示したが、TXLに対しては2.5倍高い感受性を示した。このことはTXLが従来の抗癌剤に耐性を示す口腔扁平上皮癌の治療に有効な化学療法剤になる可能性を示唆するものであった。
|