1998 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼による脳内神経伝達物質の活性化発現機序に関する神経内分泌学的研究
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10671920
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉原 俊博 北海道大学, 歯学部, 助手 (60261319)
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Keywords | 咀嚼 / 学習 / 記憶 / 迷路学習 |
Research Abstract |
現在までに得られた知見を以下に示す。 (1) 通常のラット(コントロール)・無歯顎ラットの2群に分け、迷路学習実験を行うことにより、咀嚼がラット学習能力に与える影響について調べたところ、コントロールに比較して、無歯顎ラットは有意に学習能力が劣っていた。 (2) 上記2群のラットに分け、視床下部のニューロベプタイドY濃度(記憶に関与することで知られる脳内神経伝達物質である。)を測定し、咀嚼が脳内神経伝達物質に与える影響について調べた。その結果、コントロールに比較して無歯顎ラットは有意に視床下部ニューロペプタイドY濃度が低かった。 (3) 直接餌を与えず、胃にカニューレを挿入し、高カロリー栄養輸液を与えたラットは、コントロールに比較して、迷路学習実験において有意に学習能力が劣っていた。 しかし上記の実験を進めていくにあたり、以下の問題点が存在することがわかってきた。 (1) 迷路実験の再現性に疑問が残る。迷路実験の結果はその動物の性格・くせに大きく影響され、運動能力の高い動物は良い結果を出しやすい傾向がある。 (2) 通常のラットと無歯顎ラットでは栄養状態が異なり、その違いが運動能力の差を生じ、結果的に迷路実験で異なった成績を出す可能性があり、迷路実験の結果の解釈には注意を要する。 (3) 迷路実験では、学習後の記憶の強さ(どのくらい記憶が持続するか)を評価しにくい。 以上の研究成果と問題点をふまえ、時間生物学を応用した新しい方法を次年度に開発したい。生体リズムにおける「同調」と「フリーラン」という概念はそれぞれ「学習」と「記憶」に対応する、という考え方は時間生物学において定説となっている。時間生物学的な考え方を学習・記憶効果の評価方法として応用することにより、上記3点の問題点を解消できると研究代表者は考えている。
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