Research Abstract |
目的:臨床現場で「修復物のマージンが歯肉縁下に位置する歯周組織では歯周疾患の進行が助長されているのではないか」と思えるような症例を目にすることがよくあった。今回この仮説を明確にする事を目的に他の歯周疾患に関連する項目も含め分析を行った。 対象:平成11年2月1日現在,新潟大学歯学部予防歯科外来を受診した(休止中の者は除く)50才未満の計251名の中から口腔内の診査項目に不備がある者,受診の際に実施するアンケートの回答用紙がない者,部分義歯装着者,第一大臼歯がすべて喪失している者を除いた計190名の診査結果から,第一大臼歯における歯面単位の診査結果を用いた。対象歯面は一歯につき頬舌側各々の近遠心および中央の6箇所,計4560歯面であるが,喪失歯分を除くと分析対象歯面は4290歯面となった。 方法:各歯面における出血の有無,歯肉ポケット(mm),LA【loss of attachment】(mm)の3項目を分析の対象とし,該当する歯面における修復物のマージンの歯肉縁下での有無(ない場合には非修復歯面も含む),および修復物,縁上プラーク,縁下歯石それぞれの有無を関連する項目として用いた。出血の有無については,各関連項目とクロス集計およびχ2検定を,歯肉ポケット,LAについては各関連項目の有無別に平均値を算出し,U検定を行った。 結果および考察:関連項目の中でも修復物のマージンの歯肉縁下での有無との項目で有意な関連が見られた分析対象項目は,歯肉ポケットとLAの2項目でその平均値は,マージンが歯肉縁下にある場合とない場合で,それぞれ歯肉ポケットでは1.96mm(SD:0.84), 1.79mm(SD;0.82), LAでは1.86mm(SD:1.04),1.66mm(SD:1.09)で,検定結果はともに有意であった(P<0.001)。今回の分,析結果から,上記の仮説は歯肉ポケットおよびLAの歯周疾患の有病状況を示すこれら2指標によって,支持された。今後,関連項目でのコントロールの設定や歯面種に分類するなど,さらには,他の歯牙種のデータ利用,現在歯数などの人単位でのデータの利用など分析を進める予定である。
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