1998 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白脱リン酸化酵素阻害剤dysidiolideの不斉合成と活性構造の探索
Project/Area Number |
10671984
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 隆一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (80183838)
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Keywords | dysidiolide / セスタテルペン / cdc25A / dualフォスファターゼ / 細胞周期 / 不斉全合成 / Diels-Alder反応 / 構造活性相関 |
Research Abstract |
新規セスタテルペンdysidiolideは細胞周期制御に関与する脱リン酸化酵素cdc25Aを特異的に阻害し細胞周期をG1/S,G2/Mの2箇所で停止させ、A-549ヒト肺癌細胞系、p388ネズミ白血病細胞系の増殖をそれぞれIC_<50>4.7μM、1.5μMで抑制する。cdc25Aは細胞周期のG1期からS期への移行に関与するcdk2-サイクリンAコンプレックスとG2期からM期への移行に関与するcdc2-サイクリンBコンプレックスの15番目チロシン残基と14番目スレオニン残基のdualフォスファターゼで、脱リン酸化によりコンプレックスが活性化され細胞周期の進行を促進する。癌細胞ではこれら細胞周期進行を促進するG1,Mサイクリン、cdk,cdc2の異常発現が確認されており、これらコンプレックスを活性化するcdc25Aを特異的に阻害するdysidiolideは抗癌剤のリードとして極めて重要である。 現在までの本研究の進捗状況は極めて順調であり、本年度はdysidiolideの立体選択的不斉合成に向けて大きく前進することができた。すでに2-メチルシクロヘキサノンから数工程を経て、光学的に純粋なジエンの合成を完了し、クロトンアルデヒドとの分子間Diels-Alder反応より、所望の立体化学を有するオクタヒドロナフタレン骨格を有する付加体を主生成物として得ることに成功した。現在、本付加体をジメチルヒドラゾンとした後、リチウムジイソプロピルアミドにてα-リチオニトリルとし、別途不斉合成したフリルオキシランへの求核攻撃により、全炭素骨格の立体選択的構築ならびにdysidiolideの不斉全合成の完結へ向けて検討中である。
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