1999 Fiscal Year Annual Research Report
計算化学によるN-およびS-イリド転位機構の比較研究
Project/Area Number |
10671992
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
白井 直洋 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (80080208)
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Keywords | イリド / シグマトロピー転位 / アリル転位 / ベンジル転位 / 早い遷移状態 / ab initio / (p-d)π相互作用 / 孤立電子対-π電子相互作用 |
Research Abstract |
N-およびS-イリドの[2,3]シグマトロピー転位機構の比較研究を非経験的分子軌道法を用いて行い、B3LYP/6-31G^*レベルの計算において実験結果と矛盾しない計算結果を得た。この結果は1999計算化学討論会(東京、5月)で発表した。その後、両イリドの転位反応遷移状態について更に詳細な検討をおこなった。遷移状態の構造は二つのイリドでは大きな違いがあり、N-イリドでは早い遷移状態、S-イリドでは遅い遷移状態であることを明らかにした。この特徴的な差違は反応出発系のイリドの安定性と大きく関わっていることが考えられる。S-イリドの(p-d)π相互作用についてはその有無が議論されてきたが、HOMOの解析によりその存在を明らかにしS-イリドが安定化されていることが判明した。これらの成果はアメリカ化学会誌に発表する予定で準備中である。 イリドの反応性を調べる過程で次のことが明らかに出来た。スルフォニウム塩の安定性にイオウの孤立電子対とベンゼン環のπ電子の相互作用が影響しており、その影響の定量的な解明に成功した。この結果は日本薬学会120年会(岐阜)で発表予定である。 この研究の初期に行った半経験的分子軌道法の解析では実験結果を説明できる計算結果を得るに至らなかったが、電子相関を考慮した精度の高い計算を用いることにより実験事実を説明できる満足な結果を得ることが出来た。
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