1998 Fiscal Year Annual Research Report
ニトロシルヘム錯体.ESRスペクトルのシミュレーションと運動状態の研究
Project/Area Number |
10672027
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
佐藤 三男 帝京大学, 薬学部, 教授 (70101714)
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Keywords | ニトロシルヘム錯体 / ESRスペクトルの温度変化 / NO軸配位子の分子内回転 / Stochastic Liouville法 |
Research Abstract |
1.5配位型ニトロシルヘム錯体Fe^<II>(p)NOのESRスペクトルを種々の有機溶媒中で広い温度範囲(10〜400K)で測定した。ただし,p=TMP(テトラメシチルポルフィリン),有機溶媒はトルエン, o-,m-,p-キシレン,n-,sec-ブチルベンゼンなどを用いた。 2.これらの有機溶媒は,低温において凍結すると,グラス状態と多結晶状態になるが,グラス状態の熱的安定性はn-,sec-ブチルベンゼンが最も高く,ニトロシルヘム錯体の運動状態を研究する媒質として最適であった。 3.sec-ブチルベンゼン中のFe(p)NOのESRスペクトルは,低温域における斜方対称型(5〜100K,g_1≠g_2≠g_3)から中間温度域における軸対称型(120〜200K,g_1=g_2≠g_3)を経て高温域における等方型(200〜400K,g_1=g_2=g_3)へと大きな温度変化を示した。 4.Fe(p)NO分子全体の回転運動(R_1)とNO軸配位子の分子内回転運動(R_2)の両者を考慮したStochastic Liouville法によるシミュレーションから,下記のような運動状態についての定性的な理解が得られた。 5.高温域ではR_1とR_2がともに速い。温度が下降するにしたがい,R_1は遅くなり,200K付近で凍結する。R_2は,NO軸配位子の分子軸のまわりの90°ジャンプであり,120K付近で遅くなるが,40Kぐらいまでは認められる。40〜120Kにおけるスペクトルは斜方対称型であるが,(g_1+g_2)/2付近にNO軸配位子の90°ジャンプを特徴づける吸収が観測される。現在,定量的な解析法を検討中である。
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