1999 Fiscal Year Annual Research Report
ニトロシルヘム錯体.ESRスペクトルのシミュレーションと運動状態の研究
Project/Area Number |
10672027
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
佐藤 三男 帝京大学, 薬学部, 教授 (70101714)
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Keywords | ニトロシルヘム錯体 / ESRスペクトルの温度変化 / NO軸配位子の分子内回転 / Stochastic Liouville法 |
Research Abstract |
1.5配位型ニトロシルヘム錯体Fe^<II>(P)NOのESRスペクトルを、グラス状態の熱的安定性のよいsec-ブチルベンゼン中で、広い温度範囲(10〜400K)で測定した。ただし、p=TMP(テトラメシチルポルフィリン)である。 2.5配位型ニトロシルヘム錯体Fe^<II>(P)^<15>NOは、ヘミンFe^<III>(p)Clを常法により合成し、そのsec-ブチルベンゼン溶液とNa^<15>NO_2-Na_2S_2O_4水溶液を激しく震蕩することにより、5配位型ニトロシルヘム錯体のsecーブチルベンゼン溶液を直接調製した。 3.sec-ブチルベンゼン中のFe(p)NOのESRスペクトルは、低温域における斜方対称型(5〜100K,g_1≠g_2≠g_3)から中間温度域における軸対称型(120〜200K,g_1=g_2≠g_3)を経て高温域における等方型(200〜400K,g_1=g_2=g_3)へ大きな温度変化を示した。等方型スペクトルの線幅は、室温付近で最小になり、高温域および低温域では増大した。 4.Fe(p)NO分子全体の回転運動(R_1)とNO軸配位子の分子内回転運動(R_2)の両者を考慮したシミュレーションから、高温域ではR_1とR_2がともに速く、温度が下降するにしたがいR_1は遅くなり、200k付近で凍結する。R_2は120K付近で遅くなるが、40Kぐらいまでは認められる。40〜120Kにおけるスペクトルは斜方対称型であるが、(g_1+g_2)/2付近にNO軸配位子の90°ジャンプを特徴づける吸収が観測される。 5.等方型スペクトルの線幅は、高温域ではR_1の増大に伴うスピン一回転緩和の増大によるが、低温域、ではR_1の減少に伴うgおよびhfの異方性の寄与として理解される。
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