1998 Fiscal Year Annual Research Report
Na^+,K^+-ATPaseのNa^+,K^+輸送路の同定
Project/Area Number |
10672053
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
誉田 晴夫 杏林大学, 医学部, 講師 (30086574)
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Keywords | オリゴマイシン / Na^+,K^+-ATPase / Na^+輸送路 / Ca^<2+>-ATPase / H^+,K^+-ATPase / キメラATPase |
Research Abstract |
1. イオン輸送性P型ATPase(Na^+,K^+-ATPase,Ca^<2+>-ATPase,H^+,K^+-ATPase)の中で,オリゴマイシンはNa^+,K^+-ATPaseとNa^+の相互作用のみを阻害した。 2. N末端側20%がNa^+,K^+-ATPaseα鎖で残り80%がCa^<2+>-ATPaseであるキメラATPaseは,Ca^<2->-ATPase活性を示し,Na^+によってその活性が増大する。一方,オリゴマイシンはNa^+,K^+-ATPaseによるNa^+輸送を阻害し,ATPase活性も阻害する。私はオリゴマイシンがこのキメラATPase活性のNa^+による増大分のみを,0.2μMの半阻害濃度で阻害することを見いだした。 3. オリゴマイシンはNa^+,K^+-ATPaseに結合したNa^+の輸送を止めるため,見かけ上その結合量を増大させることをすでに明らかにした。トリプシンで限定分解したNa^+,K^+-ATPaseに対するオリゴマイシン依存性Na^+結合を測定した結果,α鎖のN末端側半分(Glu26からおそらくLys443まで)がオリゴマイシンによるNa^+結合量増大に関与していることが明らかになった。 以上の結果は,Na^+,K^+-ATPaseα鎖N末端側半分にオリゴマイシンとNa^+が相互作用する領域,即ちNa^+輸送路が含まれることを示唆している。しかし,多くの欧米の研究者は,α鎖中央部の膜貫通領域内の酸性アミノ酸を他のアミノ酸に換えると,Na^+,K^+-ATPase活性やNa^+,K^+の親和性が影響を受けることを示し,これらアミノ酸がイオン輸送に必須であると考えている。次年度は,これらの結果と私の結果の整合性をつける試みを行う。 なお,これまで明らかにしてきたオリゴマイシンの作用機作は,ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)が編集する分子生物学辞典(The Encyclopedia of Molecuiar Biology)に掲載される予定である。
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