1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10672055
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
堀江 修一 帝京大学, 薬学部, 助教授 (60157063)
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Keywords | 抗血栓性因子 / 癌細胞 / 浸潤 / トロンボモジュリン / 組織因子 |
Research Abstract |
血管内皮細胞や癌細胞での抗血栓性因子の発現と癌細胞の浸潤能に関する本研究により以下の成績が得られた。 1. 種々癌細胞のTMとTFPIの発現レベルと浸潤能の関連性:膵癌細胞のBxPC-3細胞は,抗血栓因子であるトロンボモジュリン(TM)と外因系の凝固開始因子である組織因子(TF)を共に高発現する細胞であり,TFの働きを抑制する組織因子経路インヒビター(TFPI)を分泌しない特徴があった。一方,MIAPaCa-2細胞は逆にTMとTFを全く発現せず,TFPIを血管内皮細胞の数倍産生することが明らかとなった。これら癌細胞の浸潤能測定条件を確立して,ウェルにコートするマトリックスゲルの影響を調べたところ,BxPC-3細胞ではゼラチンに対する,またMIAPaCa-2細胞ではフィブロネクチンに対する浸潤活性の強いことが判明した。 2. 癌細胞のTMとTFPIの発現変化に伴う浸潤能の変化および抗体を用いた解析:血管内皮細胞においてTM発現を低下させると共にTF発現を高めるTNF-α,IL-1β,酸化LDLのBxPC-3細胞に対する処理により,経時的および濃度依存的なTMとTF活性の変動が認められ,TM発現の増加とTF発現の低下時にBxPC-3の浸潤能の高まることが判明した。TMの働きを特異抗体により抑制するとBxPC-3の浸潤活性は上昇し,TFの作用を抗体により抑制した場合には逆に浸潤活性が低下した。一方,TFPI抗体ではMIAPaCa-2細胞の浸潤能に影響を与えなかった。 3. TMの強制発現による膵癌細胞の浸潤活性の変化:TM発現のないMIAPaCa-2細胞にTM発現プラスミドをトランスフェクションしたところ,その発現量に応じて浸潤活性の顕著に低下することが明らかとなった。 以上の検討結果から,ある種の癌細胞においてTMとTFの発現がその浸潤活性に影響を及ぼす重要な因子であること,また両因子の制御により特定の細胞外マトリックスへの癌細胞の浸潤を抑制できる可能性が考えられた。
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