Research Abstract |
<1>免疫増強薬と非ステロイド性抗炎症薬による致死毒性の発現現象の一般化 胸腺欠損,肥満細胞欠損,補体第5成分欠損,Toll-like-receptor欠損など正常,病態の近交系マウス10系統を用いて検討した結果,系統間で,インドメタシン(IND)に対する感受性の違いが認められたが,βグルカンの前投与で全ての系統で感受性は更に上昇し,死亡した.これらのことから,この現象が,MHCやその他の免疫学的特異性のかなりの部分を越えた普遍的現象であることがわかった.また,βグルカン以外の免疫増強物質の活性を比較したところ,腹腔内,静脈内のいずれの投与法でも細菌,真菌菌体では感受性上昇が観察されたが,細菌内毒素では活性が認められなかった.NSAID5種を用いて検討した結果,ジクロファナク,アスピリン,スリンダクはINDと同様に感受性が上昇したが,ナブメトンではその作用は認められなかった.以上のことから,我々が見出した感受性上昇はかなり広範に起きる可能性があるが,全てにおいて同様に起きるものでは無いことがわかった. <2>致死毒性発現機構の解析 βグルカンとしてSSGを腹腔内投与,NSAIDとしてIND経口投与の系で変化の出たパラメータを検索したところ,今回新たに,体温の低下,血糖値の低下,脾臓,肝臓,並びに腹腔における好中球数(Mac-1,Gr-1陽性細胞)の著しい増加,Peroxidase活性の上昇,腹腔への腸内細菌の漏出が認められた.これらのことから,βグルカンの造血作用をきっかけに,ロイコトリエン系化学伝達物質が好中球を更に活性化し,腸内細菌並びにその菌体成分によってサイトカイン産生系が暴走し,SIRS様症状を呈して死に至ったと推測された.このことは,この有害作用が,ロイコトリエン阻害剤(AA-861)によって減弱した事からも支持された.
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