1999 Fiscal Year Annual Research Report
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10672087
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯田 彰 京都大学, 薬学研究科, 助教授 (40202816)
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Keywords | 発がんプロモーター / トリコテセン / トリコテシノール / 不完全菌 / 不斉全合成 / オレフィンメタセシス / Trichothecium roseum / 生物活性天然物 |
Research Abstract |
本研究は、不完全菌Trichothecium roseumから新規に発見された発がんプロモーター活性を示すトリコテセン、トリコテシノール類やその類縁体をバイオロジカルツールとして利用し、未知なる発現機構の発見とその解明を究極の目的としている。そのために、合成ルートの効率化を高めつつ標識化や骨格変換をも可能とする光学活性体の合成法の確率がめざし研究を遂行した。 トリコテカン骨格構築の要となるシスA/B環の合成は、研究計画書に従って、D-マンニトールを出発原料とした。シスA/B環合成の鍵中間体であるスピロラクトンへの変換は、当初の計画ルートにあったアルドール縮合反応に換えて、オレフィンメタセシスによる閉環反応を組み込むことにより、立体選択性と化学収率を共に大幅に向上させることに成功した。この鍵中間体からシスA/B環への変換は、基本的には計画されたルートに従っておこなったがいくつかの改良点を加えた。この改良へ至った経緯と効率的なシスA/B環への閉環に最も寄与した点は、保護基の選択であった。すなわち、当初計画ルートにあったスピロラクトン体の水酸基の保護にトリチル基を用いることを、合成初期の段階でMOM基に変更した。これにより、スピロラクトン体の還元的開環反応により生じるジオールの保護が容易になると共に、MOM基の除去とシスA/B環への閉環反応がワンポットで可能となった。その結果、閉環における化学収率のみを比較しても、従来10%でしか得られなかったものが、今回は一挙に80%にも向上した。この閉環体を収率良く(ラセミ体として)既知のトリコテセン合成中間体に導いた。得られた化合物のNMRデータは文献値に一致したことから、ここにエナンチオ選択的なシスA/B環の合成が完了し、トリコテセン類の形式全合成に成功した。
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