1999 Fiscal Year Annual Research Report
銅錯体による低密度リポ蛋白モデル化合物の酸化機構の解明
Project/Area Number |
10672101
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
上田 順市 放射線医学総合研究所, 第1研究グループ, 研究員 (90160168)
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Keywords | 脂質過酸化反応 / リノール酸 / アスコルビン酸 / 銅イオン / 鉄イオン |
Research Abstract |
不飽和脂肪酸の過酸化物及びその分解物が低比重リポ蛋白のリジン残基やヒスチジン残基等を修飾することにより生じる変性リポ蛋白が動脈硬化の引き金の1つと考えられている。リポ蛋白には抗酸化物質であるアスコルビン酸やビタミンEが内在しているが、それらの不飽和脂肪酸の過酸化過程での働きについてはあまり知られていない。そこで、アスコルビン酸やトロロックス(ビタミンEの水溶性誘導体)によりFe(III)EDTAの鉄錯体及びCu(II)(CyHH)2 (CyHH ; cyclohistidylhistidyl)、Cu(II)(en)2 (en ; ethylenediamine)等の銅(II)錯体によるリノール酸の過酸化過程がどのように変化するかを分光学的手法や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて検討した。その結果、アスコルビン酸存在下では、鉄錯体によるリノール酸の過酸化過程で生ずる共役ジエンの234nmの吸光度の経時変化とHPLCの測定結果からリノール酸過酸化物の生成とその分解がアスコルビン酸が存在しない場合よりも短時間で起こることが示された。これは、鉄錯体によるリノール酸の過酸化反応がアスコルビン酸により促進されたことを示す。これに対して、アスコルビン酸存在下での銅錯体によるリノール酸の過酸化では234nmの吸光度の増加とリノール酸過酸化物の生成が観察されず、銅錯体によるリノール酸の過酸化反応がアスコルビン酸により抑制されたことが示された。一方、トロロックスの場合では、アスコルビン酸とは逆の結果、即ち、トロロックスは鉄錯体によるリノール酸の過酸化反応を抑制し、銅錯体によるリノール酸の過酸化反応を促進した。これらの結果から、内在性抗酸化物質が鉄や銅イオン等の生体内の必須の遷移金属イオンによる不飽和脂肪酸の過酸化、さらには動脈硬化を防ぐことが示唆された。
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Research Products
(1 results)