1998 Fiscal Year Annual Research Report
光化学的に生成する過酸化ラジカルの物性解析と皮膚発癌プロセスへの影響評価
Project/Area Number |
10672113
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山中 健三 日本大学, 薬学部, 講師 (50182572)
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Keywords | 過酸化ラジカル / 皮膚発癌 / 光化学 |
Research Abstract |
本研究は、多くの環境化学物質の曝露により発生し得る活性酸素、特に過酸化ラジカルを化学的ならびに生物学的手法により、その特性および発癌機序を体系的に把握することを目的とした。その特徴として、光化学的手法により組織・細胞内において、過酸化ラジカルの生成が可能にある点である。具体的には、光照射により過酸化ラジカル産生可能と考えられる化合物を数種類合成し、これらラジカル種の物理化学的性質を把握するとともに、過酸化ラジカルの生体影響評価として、皮膚発癌影響に関する評価を実施した。以下に得られた結果を記す。 1. 光照射分解により生ずる過酸化ラジカルの物理化学的挙動を分光学的把握し、さらに、光照射生成した最終生成物をX線構造解析等により同定することで、過酸化ラジカルの生成・分解特性を把握した。 2. ヘアレスマウスでの皮膚発癌実験モデルを用いて、過酸化ラジカルを代謝的に生成すると考えられるジメチル砒素化合物の経口投与の影響について検討した結果、少なくとも、紫外線皮膚発癌のプロモーション、プログレッションを著しく増大させることを見いだした。 3. 上記、過酸化ラジカル産生物質を培養細胞に曝露し、光照射することで、細胞内に過酸化ラジカルを生成させ、試験管内発癌試験、すなわちトランスフォーメーション試験について検討した。その結果、過酸化ラジカルには、それ自身に細胞のトランスフォーメーション活性があることが証明され、さらに他のイニシエーター(ジメチルベンツアントラセンや紫外線など)によるトランスフォーメーション活性を著しく増大させることも見いだした。 今後は、光照射により発生させた過酸化ラジカルのマウス皮膚発癌評価を実施し、その発癌およびその促進機序に関しても検討を加えるとともに、発癌以外の生体影響についても光化学的手法を取り入れて解明していく予定である。
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