2000 Fiscal Year Annual Research Report
形質転換実験系における遺伝子発現変化の解析による発癌促進物質の作用機序の研究
Project/Area Number |
10672118
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Research Institution | NATIONAL INSTITUTE OF HEALTH SCIENCES |
Principal Investigator |
酒井 綾子 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 主任研究官 (20153835)
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Keywords | 発癌プロモーション / 遺伝子発現 / TPA / オカダ酸 / オルトバナジン酸塩 / BALB / 3T3細胞 / 形質転換 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
平成11年度までの研究から、BALB/3T3細胞を用いる2段階形質転換試験のプロモーション段階でTPA、オカダ酸、オルトバナジン酸塩によって共通した発現変化を示す遺伝子2種の存在が明らかになった。このうちの1つは、ネズミ胸腺細胞の細胞周期のS期に発現する核タンパク質Np95の遺伝子で、ネズミlymphoma細胞株では恒常的に高発現していることが報告されている。そこで、形質転換のプロモーション段階におけるDNA合成とNp95の発現との関係を検討した。DNA合成は、BrdUの取込によって、Np95の発現は、RT-PCR並びにノーザンブロットによって調べた。プロモーター処理の有無に関わらず、培地交換を行って24時間後の細胞でDNA合成とNp95の発現が著しく上昇した。培地中に加えられている血清がもつ増殖性の刺激に細胞が応答したもので、Np95は、繊維芽細胞であるBALB/3T3細胞でもDNA合成と並行して発現が上昇することが示唆された。TPA、オカダ酸、オルトバナジン酸塩によるプロモーション処理との関係では、2週間にわたるプロモーション処理の期間中、対照細胞に比べてNp95の発現が上昇する時期には、オカダ酸処理開始3日後を除いてDNA合成も上昇していた。このことから、2段階形質転換試験におけるプロモーター処理に伴うNp95遺伝子の発現上昇は、細胞増殖に関連するものであることが示唆された。オカダ酸処理開始3日後に認められたNp95発現とDNA合成の不一致の原因は、不明であるが、オカダ酸は、実験に用いた濃度で細胞毒性があることから、別の機序が働いてDNA合成が抑制されたことも考えられる。次に、BALB/3T3細胞を化学発癌剤で処理して生じたフォーカスから形質転換株を分離し、RT-PCRでNp95の発現を調べた。現在までに実験を終えた形質転換株では、正常なBALB/3T3細胞に比べてNp95の発現上昇が認められた。Np95の発現上昇は、形質転換の形質の維持にも関係している可能性が考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 酒井綾子: "特別研究報告:生物システムに作用する化学物質の機能と3次元構造相関の解明(第一次):3.(2)発癌プロモーターの生化学的作用と発癌プロモーション活性との関連"国立医薬品食品衛生研究所報告. 118. 194-196 (2001)
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[Publications] Ayako Sakai: "p-Nonylphenol acts as a promoter in the BALB/3T3 cell transformation"Mutation Research. (in press). (2001)
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[Publications] Ayako Sakai,Reiko Teshima: "2,5-Di-tert-butyl-1,4-hydroquinone enhances cell transformation accompanying an increase in intracellular free calcium ion concentration"Cancer Letters. (in press). (2001)
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[Publications] 櫻井治彦,梅田誠,土屋敏行,酒井綾子,獅山有邦 他: "TR T 0000:2001:化学物質のがん原性を検出するためのBALB/c 3T3細胞を用いる短期2段階形質転換試験 解説"財団法人日本規格協会(発表予定). (2001)