1999 Fiscal Year Annual Research Report
鹿児島県北西部地震と出水針原地区土石流災害後の外傷後ストレス障害に関する研究
Project/Area Number |
10672129
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福迫 博 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 講師 (60228880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝川 守国 鹿児島大学, 医学部, 教授 (70041423)
久留 一郎 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (40024004)
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Keywords | 外傷後ストレス障害 / 土石流災害 / 地震 / 細胞性免疫 |
Research Abstract |
土石流災害による被災者108名のうち同意の得られ、免疫能に対する明らかな影響のある基礎疾患(感染症,ステロイド剤の使用など)のない16名について免疫能を調べた。調べた項目は,細胞性免疫能を反映するCD4,CD8,CD56,NKCC(NK細胞活性)である。被災3ヵ月後の調査では,16名中3名(19%)のNK細胞活性が正常の-2SD以下であった。これは-2SD以下の度数が約2.5%であることを考えると約8倍という高値である。また,CD4/CD8比が低下している者も3名見られたが,この低下は正常値から大きく偏ったものではなかった。したがって,ストレスに対する感受性はCD4/CD8比に比べてNKCCの方が高いと考えられる。次にPTSDと細胞性免疫能の関連については,上記のNKCCが低値を示した者の中二名が調査表でPTSD傾向と判断されたが,明らかなPTSDとは診断されなかった。PTSDと判断された者がNKCCが低値を示さなかった13名の中に5名いるので,調査表で判断されたPTSDとNKCCの関連性については否定的であった。しかし,上記の三名にNKCCの結果に基づいて個人面接をすると,特に災害発生から3ヵ月の間フラッシュバック体験をしていたことや雨音に非常に敏感になって不眠傾向であったことなどを話してくれるようになった。また,6ヵ月後には3名のうち一名はNKCCが1SD内に戻り,一年後には残りの二名のNKCCも約二倍に上昇していた。これらのことから,NKCCはストレスによる細胞性免疫能の低下を反映していると考えられるが,PTSDとの関連は弱いものと考えられる。しかし,NKCCの結果を基に面接を行う過程で,初めて自分の抑圧されていた体験や心理状態を語ることが可能となるなど,治療的には有用であると思われる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 久留一郎: "スクールカウンセラーとPTSD〜カウンセラーの「きづき」としてのPTSD"現代のエスプリ別冊特集(スクールカウンセラーの実際と展望). (印刷中).
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[Publications] 久留一郎ら: "外傷後ストレス障害(PTSD)に関する心理学的研究(第12報)〜地震・土石流災害におけるPTSD出現率の経時的変化(被災後2年後の経過)"日本心理臨床学会第18回大会発表論文集. (印刷中). (1999)
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[Publications] 久留一郎ら: "鹿児島県北西部地震に北西部地震に関する心理学的研究(V)〜被災1年6ヵ月後の児童生徒の心の健康調査〜"小児保健かごしま. 12. 59-63 (1999)
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[Publications] 久留一郎ら: "鹿児島県北西部地震に北西部地震に関する心理学的研究(IV)〜被災児童生徒の3ヵ月、6ヵ月、1年後PTSDに関する調査〜"鹿児島大学教育学部紀要. 50. 137-154 (1999)
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[Publications] 久留一郎ら: "鹿児島県北西部地震に北西部地震に関する心理学的研究(III)〜児童生徒の外傷後ストレス障害(PTSD)に関する調査分析〜"九州神経精神医学. 44. 109 (1998)