1998 Fiscal Year Annual Research Report
胃粘膜ECL細胞のグアニル酸シクラーゼ系を介したヒスタミン遊離機構と薬物応答
Project/Area Number |
10672146
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢野 眞吾 千葉大学, 薬学部, 教授 (90009655)
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Keywords | 胃酸分泌 / ヒスタミン遊離 / ECL細胞 / 一酸化窒素 / グアニル酸シクラーゼ / アデニル酸シクラーゼ |
Research Abstract |
胃粘膜ECL細胞からのヒスタミン放出における細胞内情報伝達系を解析することを目的として、アデニル酸シクラーゼ系およびグアニル酸シクラーゼ系の両系の関与およびクロストークについて検討を行った。研究成果は次の2点に要約された。第1点として、マウス摘出胃標本における胃酸分泌反応を指標に、NO供与薬の酸分泌反応を検討した。これら薬物の低用量では基礎酸分泌の増加があり、この反応はファモチジンで遮断された。より高用量では自身による酸分泌亢進反応が消失するとともに、ヒスタミンによる酸分泌反応も見られなかった。この理由としてNO供与薬は、ECL細胞とは別に、壁細胞にも直接作用し、酸分泌抑制を起こすものと考えられた。一方、内因性NO合成阻害薬の存在下でコリン作動薬およびガストリンの酸分泌反応が顕著に抑制された。従って、それらの反応にはNOを介するECL細胞からのヒスタミン遊離機構が関与していることが推察された.第2点として、ラットECL細胞を用いたヒスタミン遊離実験でECL細胞からのヒスタミン遊離薬であるガストリンのヒスタミン遊離反応はNOS阻害薬存在下で抑制され、同様にコリン刺激薬ベサネコールのヒスタミン遊離反応も抑制された。これらの反応はLアルギニン添加により反転された。一方、サイクリックGMPおよびサイクリックAMPはともにヒスタミンを著明に遊離させた。これらの結果から、ECL細胞のヒスタミン遊離反応における細胞内情報伝達にはアデニル酸シクラーゼ系とともにグアニル酸シクラーゼ系の両系が関与していることが判明した。また、これら両系はECL細胞と壁細胞のいずれにおいても情報伝達機序としての役割をもつので、どちらの細胞がより薬物応答感受性が高いか比較検討した。その結果、ECL細胞での感受性がより高いことが判明し、両系の情報伝達機序における意義が確かめられた。
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[Publications] K.Hasebe: "Inhibitory effect of N^w-nitro-L-arginine on gastric secretion induced by secretagogues and vagal stimulation in the isolated stomach." Eur.J.Pharmacol.350. 229-236 (1998)
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[Publications] S.Horie: "Stimulatory effect of dibutyrul cyclic GMP on acid secretion in mouse isolated stomach and histamine release in gastric mucosal cells." J.Physiol.(Paris). 91(発表予定). (1999)
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[Publications] 内田勝幸: "再摂食・塩酸誘起幽門洞潰瘍発生要因とジエチルジチオカルバメート併用による悪化" 実験潰瘍. 25. 167-170 (1998)
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[Publications] 松本和枝: "胃粘膜アンモニア発生系と胃粘膜障害モデル実験ならびに各種抗潰瘍薬のウレアーゼ阻害作用" 実験潰瘍. 25. 260-265 (1998)