1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10672173
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小澤 哲夫 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (80262525)
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Keywords | アンチトロンビン欠乏症 / 小胞体 / 品質管理機構 / 変異蛋白 |
Research Abstract |
目的 先天性血栓性素因であるアンチトロンビン(AT)欠乏症の分子病態を解明する目的で、type I AT欠乏症の一種AT Morioka(C95R)の変異導入・発現実験を行い、変異型AT分子の細胞内動態を解析した。 結果 野生型および変異型(C95R)ATコンストラクトを作製し、CHO細胞に導入して安定過剰発現株を分離した。パルス-チェイス法・免疫沈降法を用いた解析では野生型AT分子は液体培地中に分泌されたが、変異型分子は細胞外にはほとんど分泌されず、チェイス後9時間を経過しても細胞内に蓄積したままであった。細胞内の変異型AT分子のサイズは液体培地中に分泌された野生型AT分子より約5kDa小さいことから変異分子の蓄積はGolgi装置より上流で起こるものと推定された。 免疫電顕による観察で、変異AT分子は細胞質内に多数存在する特異な小胞構造内に局在することが確認された。この様な小胞構造は野生型AT発現細胞では認められなかった。 AT Morioka(C95R)ではAT分子内に存在する3個のdisulfide結合(C8-C128、C21-C95、C247-C430)のうちの1個(C21-C95)が失われるが、disulfide結合の喪失が変異蛋白の細胞内動態に与える影響を検討する目的でC95以外のcysteine残基をarginineに置換した5種類の変異型コンストラクトを作製し、CHO細胞に一過性に発現させた。いずれの変異蛋白も細胞外分泌の障害が認められたが、C95Rの様な細胞内への長時間残留は認められなかった。 結語 AT Morioka(C95R)は極めて特異な細胞内動態を示し、従来考えられていたproteasome-ubiqutin系とは異なる変異蛋白処理機構により処理される可能性が示唆された。現在、変異AT分子を包む膜の由来や、関与する分子シャペロンについて解析中である。本モデルは分泌型蛋白の品質管理機構の解明にあらたな手がかりを与えるものと考えられる。
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