1999 Fiscal Year Annual Research Report
先天性甲状腺腫患者のサイログロブリン遺伝子解析と分子病因論
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10672183
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Research Institution | Dokkyo University School of Medicine |
Principal Investigator |
菱沼 昭 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (40201727)
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Keywords | サイログロブリン / 遺伝子解析 / 甲状腺腫 / 小胞体貯蔵病 / 分子シャベロン / rdwラット / ミスセンス変異 / ポリモルフィズム |
Research Abstract |
当研究では前年度までに、甲状腺腫の病因としてサイログロブリン遺伝子異常(Cys1263Arg,Cys1995Ser)を同定するとともに、変異サイログロブリン蛋白は小胞体内に停滞していることを示した。その分子機構は一種の小胞体貯蔵病であり、GRP94を始めとする種々の分子シャペロンが蓄積されていた。本年度は、(1)分子シャペロンの蓄積機構の解析をさらに一歩すすめるとともに、(2)現在のところ病困不明である腺腫様甲状腺腫息者のサイログロブリン遺伝子を解析した。また、(3)サイログロブリン遺伝子異常症の動物モデルと思われるrdwラット遺伝子解析を進めた。(1)分子シャペロンGRP94,GRP78,calreticulin,PDIは蛋白レベルで増加しているが、mRNAレベルでも増加していたので、分子シャペロンの蓄積は転写レベルでの活性化が関係してることが明らかとなった。分子シャペロン転写を促進する因子としてはIre1pとATF6が報告されているが、Ire1pとATF6はmRNAレベルで増加していることより、変異サイログロブリンはIre1pやATF6遺伝子の転写も促進していることが示された。(2)腺腫様甲状腺腫患者に新たに単塩基置換Pro777Leu,Gly815Arg,Arg987Pro,GIn1425His,Thr1497Met,Ser2574Phr,Asn2615IIeを同定したが、これらのサイログロブリン蛋白は細胞内輸送は障害されていなかった(エンドグリコシダーゼHに感受性がなかった)ことより、上記塩基置換は比較的稀なポリモルフィズムである可能性が高い。(3)ラットサイログロブリンcDNA全長をクローニングし、rdwラットのサイログロブリンcDNAの塩基配列を決定した。RdwラットにGly2320Argのミスセンス変異を見い出し、変異サイログロブリン蛋白は正常に細胞内輸送されることなく、小胞体にとどまっていることを確認した。
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[Publications] Akira Hishinuma: "Two novel cysteine substitution (C1263R and C1995S) of thyroglobulin cause a defect in intracelluar transport of thyroglobulin in patients with congenital goiter and variant type of adenomatous goiter"J.Clin.Endocrinol.Metab.. 84・4. 1438-1444 (1999)
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[Publications] 菱沼 昭: "サイログロブリン遺伝子ミスセンス変異による先天性甲状腺腫2例:成人例と小児例の比較"ホルモンと臨床 特集 内分泌興味ある症例. 第34集. 61-65 (1999)
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[Publications] 柴山啓子: "チログロブリン遺伝子ミスセンス変異によりチログロブリン転送異常をきたした先天性甲状腺種の1例"ホルモンと臨床 特集 内分泌興味ある症例. 第35集. 64-68 (1999)