Research Abstract |
平成10年度と平成11年度に得られた調査結果をもとに,平成12年度は,軽運動が痴呆性高齢者に与える効果を明らかにする目的で,老人病院に入院している痴呆性高齢者にメトロノームのリズムに合わせ鈴を鳴らす軽運動を実施した。結果の分析は客観的指標(ノイロメトリー,血圧,脈拍,皮膚表面温度)から検討した。また,タッチとの比較,言語連想検査との関連も調査し以下の結果が得られた。 1.鈴鳴らし軽運動(以下,軽運動)施行後,ノイロメトリーの値は下肢よりも上肢において高値を示し,タッチ施行後は逆に,上肢よりも下肢において値が高く,特に,左足と両足においてp<0.01で有意差が見られたことから,痴呆性高齢者には,軽運動とタッチを併用することがより効果的ではないかと考えられる。 2.軽運動1分前後の血圧,脈拍の変化は,共に施行前よりも下降して落ち着いた状態を示しており,最低血圧においてp<0.01で有意差が見られた。この傾向は,軽運動3分前後の血圧ではさらに顕著に現われ,最高血圧,最低血圧ともにp<0.05で有意差が見られ,リラックスした状態を示していた。 3.脈拍の下降傾向は,血圧のそれより小さく,軽運動は血圧に影響するが,脈拍に はほとんど影響しない。 4.軽運動1分と3分のノイロメトリーの平均値,体表面温度変化に大差はなく,疾患別でも脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆の間に目立った差異はなかった。 5.言語連想検査結果から,対人関係や外界への関心などに痴呆性高齢者の性格特性が伺え,客観的指標との関連性については,統計的な処理は検査の性格上困難であるが,客観的データの数値の良いものが,言語連想検査でも刺激語に対して適切に反応する傾向が見られ,客観的指標の妥当性が示唆された。
|