2001 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代以降における科学社会学派の歴史的・包括的研究
Project/Area Number |
10680004
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金森 修 東京大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (90192541)
|
Keywords | 科学論 / 科学社会学 / サイエンス・ウォーズ / 社会構成主義 / STS / 科学技術批判 / 科学のカルチュラル・スタディーズ / SSK |
Research Abstract |
本研究は1970年代以降の科学社会学、科学哲学、科学史を総合した「科学論」の展開を通覧することを試みた。特に社会構成主義という立場を視座にして、ここ30年ほどの英米圏を中心にした科学論史を通覧した。その過程で、より細かい概念としてSSKとか、STSといった領域群の特徴を探った。1980年代に最盛期を迎えたSSKは激しい科学批判を展開し、認識論的にもかなり極端な相対主義を顕揚した運動だった。それは、80年代当時としてはポストモダニズムなどの背景とも絡み合い、一定の歴史的役割を果たした。だが、その極端な相対主義は、科学批判を単なる蒙昧主義的な反科学と混同せしめるという負の帰結も生んだ。そのため1990年代には科学者陣営から激しい反発を招き、それは1994年頃から数年間にわたって、特にアメリカで「サイエンス・ウォーズ」という極めて激しい論争となって奔出した。本研究ではその論争を、その理論的背景ともども詳しく分析することができた。その最大の成果が拙著『サイエンス・ウォーズ』である。なお、その後、科学論は自ら反省を深め、現在、理論的にはやや停滞期にある。だが、地球温暖化、GMO、原発、エイズなど、科学技術に関連してそこからでてくる社会問題は今後ますます重要性を増していくというのはあまりに明らかだ。科学論は、単純な相対主義的言辞で自己満足に陥ることなく、科学と社会との新たな関係を模索しながら、自分の理論装置を錬磨していく必要がある。本研究では、ここ30年あまりの歴史的地図を描くことで、その理論的趨勢の歴史的必然性を浮き彫りにすることができた、と自負している。
|
-
[Publications] 金森 修: "設計的生命観の射程"環境情報科学. 30. 1. 38-42 (2001)
-
[Publications] 金森 修: "タスキーギ梅毒研究の射程"科学医学資料研究. 29.4. 39-50 (2001)
-
[Publications] 金森 修: "遺伝子改造社会のメタ倫理学"現代思想. 29.10. 74-98 (2001)
-
[Publications] 金森 修: "リスク論の文化政治学"情況. 2002、1月号-2. 52-69 (2002)
-
[Publications] 金森修, 池田清彦: "遺伝子改造社会 あなたはどうする"洋泉社. 230 (2001)