1998 Fiscal Year Annual Research Report
フランス王立科学アカデミーの懸賞論文と18世紀科学の関係
Project/Area Number |
10680005
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (20262941)
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Keywords | 王立科学アカデミー / 懸賞論文 / 啓蒙時代 / Xスレー / 科学制度史 |
Research Abstract |
本年度の研究によって得られた成果は以下の通りである. 1. 王立科学アカデミーの懸賞論文の種類は多種多様であり,本研究の対象であるメスレーの懸賞はその中でももっとも大規模で,早い時期に開始され,長期にわたって行われたものである. 2. メスレーの遺言の内容と実際の懸賞の運用は異なっている. 3. この懸賞には博物学関係のものは存在しない.自然学,数学,天文学,航海学に分類されるもので占められている.これは最初にアカデミーによって決定されていた.ただし,例外の年も存在する. 4. 現役のアカデミー会員は応募資格が無いが,外国人会員,文通会員などにはあり,これらと,のちにアカデミー会員になった人物を入れると,なんらかの形でアカデミーと関係している人物が入選者の多数派である. 5. 入選者より次点者の方が,国籍,職業その他において多様である.また匿名を除くと,女性は1738年度の次点者デュ・シャトレ侯爵夫人のみである. 6. 1750年が,分野を問わず18世紀の啓蒙期ヨーロッパをふたつに区切る時の目安となっているが,この懸賞でもやはりその傾向が認められる.現在のところ表題のみの分析であるが,だいたい形而上学と深く係る内容は1750年以降にはほとんど認められない.反対により数学的でテクニカルな天文学的問題が1750年以降に頻出している. 来年度にはこれに加えて,さらに審査員,賞金額の特定を行い完全なデータベースを作成する.また,天文学関係のものについて,具体的に形而上学がどのように消滅してゆくのかを内容を通して明らかにしてゆく.
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