2000 Fiscal Year Annual Research Report
フランス王立科学アカデミーの懸賞論文と18世紀科学の関係
Project/Area Number |
10680005
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (20262941)
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Keywords | 啓蒙主義 / フランス王立科学アカデミー / メスレー懸賞 / ニュートン主義 / 女性と科学 / 百科全書 |
Research Abstract |
最終年の本年度は,メスレー懸賞のまとめと,アカデミーそのものの歴史,また例外としての,女性が参加した1738年の懸賞を特に仔細に分析した.そこから判明したのは,懸賞のの開始時期に常任書記であったフォントネルの意図,科学の有用性をフランス社会に知らしめる意図が,メスレーの中にもあったということである.なぜなら,フォントネルが科学の有用性の代表と考えた天文学の地図や航海術への応用は,メスレー懸賞の主要な二つの主題そのものだからである. またこの懸賞はひろい範囲の人々が応募しているように見えるが,結局フランス王立科学アカデミー関係の人間が主な応募者であったことがわかった.未来の会員まで含めて考えれば,雑誌に論文が掲載された者の半分以上は何等かの形で,アカデミーと関わった者であり,独学の隠れた才能が存在した可能性はほとんどない.この時代(特に世紀後半)は科学の専門化がすすむ時期であり,天文学と造船術は特にこの傾向の著しい分野だった.上のこととも関係するが,この科学の専門化現象は,アカデミー会員になることができず,高等教育も許されていない女性をも科学から排除することを意味する.匿名の受賞者に女性がいる可能性は低く,唯一判明している参加者,デュ・シャトレ夫人が,数学をさほど必要としない分野で応募したということは偶然でない. この1720年から93年まで続いた懸賞が示しているのは,18世紀フランスにおける数学的ニュートン主義の普及と科学の専門化であり,それは科学の有用性が社会に浸透してゆくと同時に,科学が数学を理解できない,または数学教育を許されない人々を排除してゆく過程でもあった.
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Research Products
(1 results)