1998 Fiscal Year Annual Research Report
イメージトレーニングの有効性に関する運動神経生理学的機序の解析
Project/Area Number |
10680031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
笠井 達哉 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (60112702)
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Keywords | 運動イメージ / 運動誘発電位 / 大脳半球 / 人指し指 / 磁気刺激法 |
Research Abstract |
「運動イメージ」に関する従来の研究は、この現象が抽象的であることから、主に心理学(運動心理学)の分野で取り扱われてきた。しかし、最近の神経生理学的手法の目覚ましい発展の結果、ヒトを対象にして、脳内で起こっている神経細胞(脳細胞)の興奮性の変化を、客観的に捕らえることが可能となり、神経生理学的解析の重要な研究対象となってきた。その一つが、ここで用いた「経皮的大脳皮質磁気刺激法」である。本法は、疼痛や不快感を伴うことなく、大脳皮質運動野の興奮性の変化を誘発筋電図(運動誘発電位)として記録することが出来る。この特徴を生かして、本研究では、今まで運動イメージという抽象的な現象を客観的に評価しなかったことから生じる誤解・曲解を一蹴すべく、大脳皮質運動野の興奮性の変化と運動誘発電位の変化との相関関係を、具体的に目に見える形で評価しようとした。 その結果、被験者が何も考えていない(心に何も思い描いていない)状態に対して、ある運動(今回は、単純な人差し指の屈曲、伸展、外旋運動を対象とした)を積極的に心に思い描いた場合には、顕著な運動誘発電位の増大が観察された。しかも、この運動誘発電位の増大の程度は、実際の運動で、その筋(今回対象としたのは、第一背側骨間筋)が関わる程度(その運動遂行時の筋放電量)によく対応していた。また、この様な運動イメージ再生機能には、脳に左右差があることが分かった。すなわち、運動イメージ再生機能は「左半球優位」であった。 これらの事実から、「運動イメージ」という抽象的で、高次の中枢神経系機能をこのように客観的な指標に置き換えて評価できる可能性を示唆した。今後は、このような運動イメージと運動誘発電位との質的関係の詳細を調べることが重要な課題である。
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