2000 Fiscal Year Annual Research Report
イメージトレーニングの有効性に関する運動神経生理学的機序の解析
Project/Area Number |
10680031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
笠井 達哉 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (60112702)
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Keywords | motor imagery / MEP / TMR / FDI muscle / human / step contraction / ramp contraction |
Research Abstract |
平成12年度は、平成11年度の成果を踏まえて、「運動イメージの運動学的意味」を再吟味することを研究計画として実施した。すなわち、中枢レベルの変化と脊髄レベルの指標に与える「運動イメージ再生の効果」を継続的に調べる一方で、運動誘発電位(MEP)は、実際の運動遂行状態の何を如実に反映するかについても、平行して検討した。後者の目的のために取り上げた運動は、等尺性の素早い運動(ステップ運動)と速度の遅いゆっくりとした運動(ランプ運動)であった。 得られた研究成果は、予想に反して驚くべきものであった。すなわち、同じ筋出力レベルであるにもかかわらず、その運動の制御に関わっている中枢性運動制御機構の関わり方が、全く異なっていたからである。素早い筋収縮を行う事態では、一過性の運動指令が上位運動制御機構から発せられるとその制御機構は、それ以後の運動制御には一切関わらなくなる(フィードフォワード運動制御)ことは良く知られている。一方、ゆっくりした運動の遂行では、末梢からの情報を取り入れながらよく制御された運動が遂行される(フィードバック制御)。すなわち、MEP振幅は筋出力の大小とは無関係に、常に一定であったが、運動の遂行様式の違いによって、同じ筋収縮量であってもMEP振幅は劇的に異なって出現した。この事実は、脳は運動出力の大小のような詳細な下行性運動指令をその都度生成するようなことはせず、素早い運動か否かと言った次に行う運動の遂行様式を制御していることが示唆される。 今回得られた事実から、運動イメージの効果をMEPの振幅変化から検討する際、運動のどのような側面を反映した結果であるかをよく吟味することが重要であること分かった。この点が、次回からの解析の焦点となることが予想される。
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[Publications] Tatsuya Kasai and Susumu Yahagi: "Motor evoked potentials of the first dorsal interosseous muscle in step and ramp index finger abduction"Muscle & Nerve. 22. 1419-1425 (1999)
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[Publications] Kazuo Oishi,Tatsuya Kasai and Takashi Maeshima: "Autonomic response specificity during motor imagery"Journal of Physiological Anthropology and Applied Human Science. 19-6. 255-261 (2000)
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[Publications] Yoshiteru Hasegawa and Tatsuya Kasai: "Task-dependent excitabilities of motor evoked potential (MEP) were not modified by different muscle contraction modes"Electrophysiology and Kinesiology-International Proceedings Division. 415-417 (2000)