1999 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける夏のモンスーンの長期変動と環境変化
Project/Area Number |
10680098
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 淳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80165894)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖 大幹 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (50221148)
加藤 内蔵進 岡山大学, 教育学部, 助教授 (90191981)
|
Keywords | モンスーン / 長期気候変動 / 環境変化 / 降水量 / 洪水 / 東南アジア / 梅雨前線帯 / GAME |
Research Abstract |
本研究では、東南アジアモンスーンおよびその周辺域における降水量の半世紀スケールでの変動の実態とメカニズムを解明し、また環境変化との関連を考察することを目的として研究を進めている。本年度は研究の基礎資料となるデータの入手をはかったほか、中国大陸および東南アジアにおいて、いくつかの新事実が明らかになった。まず1998年の揚子江の大洪水について調査し、この大洪水は最近では1954年以来の大洪水であったが、歴史的な記録からは特別に大きな大洪水ではないことがわかった。ただし流域降水量が1954年よりも少なかったのにもかかわらず、水位はそれを上回っており、堤防などによる河道の固定や、堆積による河床の上昇といった河川環境の変化が洪水に関連していることが示唆された。また1991年の准河流域の豪雨と関係するメソスケール擾乱の実態を解析した。この他、降水量の長期変動を考える際の基礎となる平均的なモンスーンの季節変化の実態の解明として、東南アジアと西部北太平洋の両モンスーン地域の季節推移と水蒸気輸送や収支を検討し、東南アジアモンスーンが赤道非対称な南北両半島間での水蒸気輸送システムによって維持されているのに対し、西部北太平洋では、赤道非対称なシステムに匹敵するほど赤道に対し対称的な東西方向の水蒸気輸送が関与していることが明らかとなった。この結果は今後のモンスーンの長期変動を解釈する際の重要な知見である。今後はさらに長期間のデータからモンスーンの長期変動の解明をおこなっていく計画である。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Murakami, T., Matsumoto, J. & Yatagai, A: "Similarities as well as differences between summer monsoons over southeast Asia and the westen Nouth Pacific"Journal of the Meteorological Society of Japan. 77-4. 887-906 (1999)
-
[Publications] 松本 淳: "大洪水の歴史と気候変動"科学. 69-7. 619-626 (1999)
-
[Publications] Matsumoto, J. Okatani, T. & Murakami, M.: "Rainfall variations of the early summer rainy season in south china"Proceedings International Conference on Climate change and Variability. (2000)
-
[Publications] 中川一,玉井信行,沖大幹,吉村 佐,中山修: "1998年中国長江の洪水災害について"京都大学防災研究所年報. 42-B-2. 273-290 (1999)
-
[Publications] 沖 大幹: "気象水文概況"1998年長江・松花江の洪水に関する国際シンポジウム予稿集. 17-26 (1999)
-
[Publications] 加藤内蔵進、木尾 尚登: "1991年7月前半における長江・淮河流域の梅雨前線帯とxyの低気圧の事例解析"日本気象学会関西支部例会講演予稿集. 88. 33-36 (1999)