1998 Fiscal Year Annual Research Report
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10680100
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 眞紀子 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (10175119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学部, 助手 (50243332)
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Keywords | 腐植酸Pg / 年代分布 / 環境指標 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は以下の通りである。 1) 新潟県妙高山で調査を行い,約1000年前に生成された埋没火山灰土からPgの起源である菌核を採取し、EDA,EPMAによる微量元素分析を試みた。その結果、菌核の基質にはアルミニウムが濃縮されていることが明らかとなった。また、他地域の現表土から採取された菌核についても同様の結果が得られた。このことは土壌の無機有機複合体形成における生物作用を考える上で重要な知見であると考えられ、投稿論文を準備中である。 2) Pgの生成を支配する環境条件を明らかにするために、群馬県赤城山の北面、南面の斜面500〜1500mの地域を対象に14日間の集中調査を行い、表土における腐植酸Pg生産量と現存環境との対応関係について土壌分析と統計解析を行った。その結果、Pgの生産には、従来の知見と同様に温度、水分条件が関与していることが明らかとなった。また、C/N比との強い負の相関が示され、腐植の供給と分解の平衡到達したときにPgの吸収発現が強くなることが明らかとなり、従属栄養の菌体にとっての栄養環境の劣化とPg生産との関係が新たに考察された。さらに、ササに代表される林床植生の発達とPgには正の相関がみられ、Pg生産と林内の光環境との関係が示唆された。今後、紫外線到達量について現地計測を行い、Pg生産と光環境についてさらに検証していく。 3)腐植酸Pgの古環境指標としての有効性を検討するために、わが国の火山灰・古土壌系列および中央ヨーロッパのレス・古土壌系列から採取された試料を用いて腐植酸Pgの年代分布を明らかにする分析に着手した。その結果、Pgは火山灰、レスいずれについても5万年前の古土壌から検出され、火山灰・古土壌系列では寒冷期に、レス・古土壌系列では温暖期に対応して腐植酸Pgの発現が強くなることが示された。以上より得られた知見をもとに、今後は代表試料について、高速液体クロマトグラフィーにより腐植酸を分画し、Pgのキャラクタリゼーションと環境との関係を求めていく。また、古土壌より抽出されるPgの存在形態を明らかにするために、蛍光X線スペクトル分析を用いて無機元素の状態解析を行う。
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[Publications] Watanabe,M.et al: "A basic study for the use of Pg absorption strergth of humic acid as an indicator of past bio-physico environmental" 1st IGBP PAGES Open Science Meeting Abstract. 132 (1998)
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[Publications] Watanabe,M.et al: "Pg absorption strength of humic acid in loessic and tephric paleosol:Sequences:incplication for Ouaternary Paleof environmental reconstruction" 日本腐植物質研究会講演要旨集. 14. 29-30 (1998)