1998 Fiscal Year Annual Research Report
難聴学級児童の日本語文法獲得及び各教科学力向上のための実験教育的研究
Project/Area Number |
10680250
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
神 常雄 岩手大学, 教育学部, 助教授 (30113856)
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Keywords | 難聴 / 接続詞 / 統辞機能 / 診断テスト |
Research Abstract |
今回の研究成果を、当初掲げていた研究計画に即して以下に述べる。 1. 研究計画(1)文法能力を診断するために、これまで助詞を中心に単文の産出・理解テストを作成し、その発達を調べてきたが、今回我々は、あらたに接続詞をとりあげ、文と文の関連を表現したり理解できるかどうか、より複雑な文章レベルの文法能力の発達も調べることにした。文の論理的関係を見るために、 「逆接」 「説明」 「理由」 「累加」の4種類の接続詞を使用し、さまざまなレベルでの文の産出・理解の発達を調べた。 2. 普通児(普通小学校1年〜4年計138名)にたいする調査の結果、理解課題は1年生でもほぼ80%以上が達成できるのに対して、産出課題は4年生でその水準に達つしており、接続詞の産出を要求する課題は子どもにとってより困難であった。この種の課題は低学年から中学年にかけて徐々に獲得される傾向が一般的に見られた。 3. 難聴児(小学1年〜中学3年の児童生徒45名、聴力レベル28.8〜126.3dB)の結果から、70dB以上の高度・重度難聴児において特に接続詞の獲得が悪いこと、接続詞の種類は理解できていてもその使い方に問題があること、したがって文章を論理的に展開できず、文脈の誤解による混乱が強く見られた。しかし、難聴の程度が極めて重篤でも接続詞の産出・理解がよくできている例もあり、日本語文法に関する適切な教授-学習を組織できればその習得も十分に期待できると考えられる。 4. 研究計画(2)接続語の学習を、市内難聴学級の5年生児童2名を対象に、週1時間のペースで1年間実施した。その結果、難聴学級に在籍する中・高度難聴児ではこの種の学習を十分に達成することが可能であることがわかった。今後、指導方法の再検討を行い、接続詞学習のための効果的プログラムを試作してみる。
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