1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10680259
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
国分 充 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40205365)
|
Keywords | 知的障害児 / 歩行 / ダウン症 / お盆運び |
Research Abstract |
知的な障害を有する子どもに運動を行わせるときにもっている能力を十分に発揮させるような課題設定のあり方についての示唆を得、また、知的障害児の臨床型による運動適性の違いを明らかにするために、本研究では、日常的にしてもっとも基本的な運動行動である歩行を取り上げ、課題設定にともなう臨床型による歩行の様相の差異を検討した。対象は、ダウン症児10名(平均生活年齢15.4歳、平均精神年齢4.8歳)と、ダウン症ではない知的障害児18名(平均生活年齢16.3歳、平均精神年齢4.8歳)であった。求めた運動課題は、水を入れたコップが載ったお盆を3メートル運ぶというもので、こぼした水の量、歩行時間、歩数を計測した。その結果、こぼした水の量にはダウン症児と他の知的障害児で差がない、時間および歩数はいずれもダウン症児で大きいということが明らかとなった。しかし、時間を歩数で割った一歩あたりの時間はほとんど変わらなかった。これらのことから、ダウン症児はslowにして、clumsyと言われるものの(実際、本研究でも、かかった時間は他の知的障害児よりも長く、その意味では確かにslowと言えるのであるが)、丁寧さにかんしては他の知的障害児とかわらないことがわかり、そのストラテジーは一歩のようなひとつひとつの運動単位を小さくするというものではないかと考えられた。以上から、運動の評価において比較的軽んじられている丁寧さや注意深さといったものの評価も重要であることを示しており、そうした面で優れている子どもの存在をしめすものである。このことは運動課題の設定において十分注意すべきことと思われる。
|