1999 Fiscal Year Annual Research Report
日本における多文化教育の内容と方法の創造-英国の経験に学びながら-
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10680271
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
田渕 五十生 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10179864)
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Keywords | 多文化教育 / 定住外国人教育 / 在日コリアンへの教育 / 中国帰国者の教育 / 国際結婚の配偶者 / 多文化共生社会 / 民族的アイデンティティ / マイノリティ教育 |
Research Abstract |
本年度は研究の2年目であり、マイノリティ教育を巡る文献調査に加えて、二つの調査研究を行った。一つは英国におけるマイノリティ教育の実践者への聞き取り調査であり、今一つは、中国帰国者からの聞き取り調査である。 1999年9月上旬、英国を訪問し、多文化教育の理論家として著名なリーズ大学ヨーク・リボン・カレッジのマーゴット・ブラウン氏へのインタビュー調査を行なった。また、インド・パキスタン系、カリブ・アフリカン系などのマイノリティが居住するリーズ市の初等学校で多文化教育を実践している教師達から、英国における最近の動向について聞き取り調査を行なった。そして、マイノリティの児童・生徒への指導に止まらず、マジョリティの英国人児童・生徒の許容的・支持的な雰囲気をどう創るか、その両者を統一的に捉えようとする実践動向を知ることができた。その取り組みは、日本での在日コリアンへの実践傾向と共通しており、マイノリティ教育の普遍性を確認することができた。 国内の調査では、本年度は中国帰国者からの聞き取り調査を主要に行なった。中国帰国者といっても多様で世代によって意識も異なっている。したがって、世代間意識に注目し、中国残留婦人、残留孤児一世、残留孤児二世、残留孤児三世とそれぞれの世代への聞き取り調査を行った。そして、彼らのライフヒストリーを書き、三世の教育を巡る問題について、二組の兄弟姉妹のエスノグラフィーを作成した。 刊行成果としては、「多文化教育の価値は多文化主義的に実践されてはじめて意味を持つ」と題して『これからの在日外国人教育'99』で発表した。また、「人権・多文化教育の動向と課題に関する研究-奈良県を中心とする状況分析-」を奈良教育大学教育実践研究指導センター研究紀要で報告した。
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[Publications] 田渕五十生: "「在日コリアン」の教育の国際理解教育に示唆するもの-異文化理解から多文化教育の発想へ"国際理解教育. vol.5. 6-24 (1999)
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[Publications] 田渕五十生: "多文化教育の価値は多文化主義的に学ばれてはじめて意味を持つ"これからの在日外国人教育. 99'年版. 249-254 (1999)
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[Publications] 生田周二,田渕五十生,玉村公二彦: "人権・多文化教育の動向と課題に関する研究-奈良県を中心とする状況分析-"奈良教育大学教育実践指導センター研究紀要. 第9号. 169-180 (2000)