1998 Fiscal Year Annual Research Report
数学教育における多世界パラダイムに基づく授業論の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
10680276
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中原 忠男 広島大学, 教育学部, 教授 (90034818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 武志 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (60239895)
小山 正孝 広島大学, 教育学部, 助教授 (30186837)
佐々木 徹郎 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (20170681)
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Keywords | 急進的構成主義 / 相互作用主義 / 社会文化主義 / 相補性の原理 / 多世界パラダイム |
Research Abstract |
近年、数学教育においては大きな影響を与えている、急進的構成主義、社会的相互作用主義、社会文化主義の3つの思潮を比較考察した。これらの立場は、いずれも子どもたちが学習へ主体的・能動的に関わることを求めている点や学習の重要な方法論に社会的相互作用を位置付けている点などに共通点がみられる。しかし、他方において、それらには認識の本性、言語観、学習観のいずれにおいても厳しい対立点がある。とりわけ、認識の本性の捉え方は互いに相いれることのできない原理であり、それらの統合は理論的にはできないことと考えられる。 しかし、子どもによる算数・数学の実際の学習活動を観察分析すると、3つの面がともに実態として度々現れてきている。すなわち、理論的には矛盾するのだが、学習の実態を最もうまく説明しようとすると、その3つの主義を協応させ、総合的に捉えざるを得ない状況がみられる。 こうした統合の立場は、量子力学における相補性の原理や多世界解釈に相当する。それらは理論的な対立を内に含みながらも、量子の実際の運動をよりうまく説明することを求めて考え出された解釈理論である。また、CobbやBauersfeldらが、今日、構築しようとしている数学の学習理論もそうした立場で提起されたものと受けとめるべきであろう。 そこで、学習者、他者、文化、あるいは急進的構成主義、社会的相互作用主義、社会文化主義の3つの世界をそれぞれ設定し、それらを基盤とする互いに相いれない原理を協応させ、補完して、数学の学習を捉え、それを基に数学の授業を構成する立場を、多くの世界からなるパラダイムという意味で数学学習の多世界パラダイムということにし、この多世界パラダイムに基づく、数学学習の理論的実践的な研究の重要性を提起した。
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Research Products
(1 results)