1998 Fiscal Year Annual Research Report
中国語系日本語学習者の聴解力と有音・無音破裂子音の弁別の能力の調査・分析
Project/Area Number |
10680307
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 富美子 立命館大学, 法学部, 助教授 (50283049)
|
Keywords | 聴解力 / 中国人日本語学習者 / 有声・無声破裂音 / 母語干渉 / 音素弁別能力 |
Research Abstract |
有声・無声破裂音の対立をもたない中国北方地域の中国語話者に比べ、有声・無声破裂音の対立を持つ上海地域の呉語話者の方に、発話・聴解ともに上達の早い学習者が、最近見受けられるようになってきている。音素数の少ない日本語では、/p-b,k-g,t-d/の音素対立を弁別する能力は、談話理解に大きな比重を占めるものと推測されるが、これまで日本語の分節音素の聴取能力が談話理解にどの程度、どのように関与しているか、吟味されることは少なかった。そこで、本研究ではまず、/b//d//g/の有声破裂音を持たない北方方言話者に対して聴取実験を行い、日本語の有声・無声破裂音を範疇的に知覚する弁別能力と、聴解力(談話理解力)との間に何らかの関連があるか見た。実験は以下の手順で進めた。 1. 日本語の有声・無声破裂音を語頭・語中に含み、前後の母音環境、アクセントを考慮して312の2モーラ語を選定し録音した。 2. 312語の聴取実験から得られた学習者の誤聴を弁別特徴によって分類し、その結果と聴解力(談話理解力)テストの結果との相関を見た。 その結果、以下の点が指摘された。 1. 有声・無声破裂音の対立を持たない中語国話者は、その母語干渉が見られ、日本語の有声・無声破裂音の有声性・無声性の弁別が困難である。 2. 破裂音の有声性・無声性の弁別能力は、聴解力と高い相関が見られ、「有声・無声破裂音の弁別能力は日本語の談話を理解する上で、重要な音声識別能力である」ことが立証された。 現在、有声・無声破裂音と聴解力の習得過程、破裂音の音声環境による誤聴の差異の分析とともに、有声・無声の対立を母語に持つ呉方言話者に対する実験調査を進めている。
|