1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10680472
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小野 興太郎 島根大学, 総合理工学部, 教授 (40106795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北條 喜一 日本原子力研究所, 固体物理研究室, 室長
荒河 一渡 島根大学, 総合理工学部, 助手 (30294367)
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Keywords | ヘリウム / バブル / プラズマ対向材料 / オーステナイト鋼 / 拡散 / 電子顕微鏡 / 格子欠陥 / 照射損傷 |
Research Abstract |
プラズマ対向材料では、比較的低エネルギーのヘリウムや水素同位体による衝撃を受けることから、耐放射線特性の研究が重要な課題である。本研究では特に、材料のスエリングの素過程であるヘリウムバブルの動的挙動と偏析の電子顕微鏡その場観察による研究を目的としている。 1. Fe-16Ni-17Cr中のヘリウムバブルの動的挙動と粒界偏析 オーステナイト鋼系核融合炉材料のモデル合金Fe-16Cr-17Niを試料として、これに10-15keVのヘリウムイオンを電子顕微鏡観察しながら照射し、バブルの形成を調べた。さらに照射後、1250℃まで段階的に温度を上げ、熱平行状態でのバブルの熱的移動を観察しビデオに記録した。画像の解析からバブルの移動を定量的に抽出した。 バブル密度、サイズの温度依存性が測定できた。例えば、450-550℃付近の照射では、直径1-3nmのバブルがイオン飛程付近(30-50nm)に形成された。8x10^<19>ions/m^2照射したときピーク付近の密度は4x10^<23>/m^3程度であった。より高温の照射ではサイズの増加と密度の減少が見られた。直径1-3nm程度のバブルは、約900℃付近から移動し始め、移動しながら、合体したり、試料表面に消滅したり、粒界に偏析する様子が観察された。移動挙動の解析から、移動したバブルの平均二乗距離〈R^2〉が、移動に要した時間に比例することを初めて見い出した。このことは、バブルがブラウン運動していることを示している証拠と考えられる。これらの結果から、ランダムウォーク理論にしたがってバブルの拡散係数を評価することができた。例えば、1100℃で1x10^<-19>-3x10^<-18>m^2/sの値がサイズに依存して得られた。 ヘリウムの照射条件によっては、バブルの移動挙動に異常な点が現れることも分かった。このことは、バブル周りに照射誘起偏析した合金元素の効果によるものと考えて、現在その分析を進めている。
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