1998 Fiscal Year Annual Research Report
自然湿地におけるメタンフラックス及びその支配因子に関する研究
Project/Area Number |
10680498
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺井 久慈 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助教授 (10023855)
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Keywords | メタンフラックス / 釧路湿原 / 低層湿原 / 高層湿原 / ハンノキ林 / 気泡メタン / 水素フラックス / 携帯型メタンアナライザー |
Research Abstract |
従来、湿原からのメタンフラックスの測定は、湿原にチャンバーを設置してチャンバー空気を真空バイアルに採取して研究室に持ち帰りメタン濃度を測定し、植生によるメタンフラックスの違いを比較してきた。その結果では、ヨシを主体とする低層湿原が最も高いメタンフラックスを示し、ハンノキ林やミズゴケを主体とする高層湿原では比較的低いフラックスであった。しかし、本研究では現場でチャンバー内のメタン濃度を直接測定することにより、フラックスを支配する要因を明らかにすることを目的とした。そのために、バッテリー電源方式の携帯型メタンアナライザーを発注購入し、1998年7月と8月北海道釧路湿原において現場測定を実施した。その結果、低層湿原のフラックスが低く(9〜10mg/m^2/h)、7月、8月ともにハンノキ林におけるフラックス(14〜17mg/m^2/h)が低層湿原を上回り、高層湿原も低層湿原と同レベルのフラックスを示した。また、スゲが優占する低層湿原で従来から電源を敷設してメタンフラックスの自動測定を行なっているが、8月に行なった自動測定結果(140mg/m^2/h)と比較してもハンノキ林のメタンフラックスは高い値であった。また、メタンと同時に測定した水素フラックスについても、低層湿原では、従来は放出フラックスであったものが吸収フラックスに逆転し、ハンノキ林では水素放出フラックスが認められた。このことから(1)低層湿原において、ヨシを含まない開水面サイトでは低いフラックスが得られているが、ヨシを含むサイトでも低フラックス部域が存在する可能性がある、(2)ハンノキ林において、保存中にメタンと反応してメタンを減少させる気体成分が存在する可能性がある、ことなどが示唆された。今後、低層湿原の気泡メタンやヨシの茎から採取したメタンの炭素安定同位体比などの解析により、メタンフラックスを支配する要因を解明する。
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