Research Abstract |
塩素化ナフタレン(PCNs)は、近年、外因性内分泌撹乱化学物質として注目されているダイオキシン類と同様に非意図的に人間活動によって生成し、しかもダイオキシン類に極めて類似する生体毒性影響が懸念されている。しかしながら、その発生源、環境中のレベルおよび動態に関する情報は不足している。そこで本研究では、環境中のPCNs汚染を評価するために、まず環境試料を対象とする精度の高い微量分析法を確立し、環境分布と動態を解析するとともに汚染の毒性学的評価を試みた。試料として愛媛県と大阪府下のヒトの脂肪組織を用い濃度レベルと残留特性について検討した。その検出濃度は大阪試料が比較的高く2,000乃至250,000pg/g(脂肪重当)であった。高濃度の異性体として1,2,5,8-/1,2,6,8-TeCN,1,2,3,5,6-/1,2,4,6,7-PeCN,1,2,3,6,7-PeCN,1,2,3,4,6,7-/1,2,3,5,6,7-HxCNが確認され、これらの異性体は人体内で代謝分解されにくいか、日常的に曝露量が多いことが考えられる。さらにPCNs濃度はPCDD/DFsと比較して高い傾向を示した。一方、Giesyらが近年報告しているPCNsのTEFs(2,3,7,8-TeCDD毒性等価係数)を用いてTEQs(毒性等量値)を求めると、PCDD/DFsより低い値であった。PCNsの人体汚染に関する毒性評価に関する最終的な結論を導くためには、さらに試料数を増やして検討する必要があろう。なお前年度、焼却灰中に検出した比較的高濃度のPCNsに関して培養細胞を用いる毒性試験を実施し毒性学的評価を行ったところ、PCNs以外のフラクションに強毒性物質の存在を示唆した。
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