2000 Fiscal Year Annual Research Report
集水域の栄養塩負荷が湿原生態系に及ぼす影響評価に関する研究
Project/Area Number |
10680531
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
野原 精一 国立環境研究所, 生物圏環境部, 室長 (60180767)
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Keywords | 尾瀬ヶ原 / 雪 / 栄養塩 / クロロフィル / 同位体比 / 航空写真 |
Research Abstract |
尾瀬の水循環の解析を行いアカシボの発生との関連について考察し,発生メカニズムを明らかにする事を目的とした。特に研究見本園での水平分布と尾瀬ヶ原全体の分布に注目した。アカシボの発生分布を把握するため,航空写真の撮影を2000年5月25日に行った。セスナ機を用いて高度約4300mから尾瀬ヶ原を8カット撮影した。2000年5月24-26日に研究見本園の53ヶ所でアカシボを含む雪の全層コアサンプル及び定性サンプルを採取した。持ち帰ったアカシボ懸濁液はGF/Fガラスフィルターでろ過後,20℃湿潤,75μEm^<-2>光量で2hr静地培養した後に蛍光測定器(Mini-PAM)でクロロフィルの量子収率を測定した。綿布を湿原の表層に設置し綿布の分解率の場所による違いを比較した。SSは最大で200g m^<-2>,アカシボSSの量子収率は著しく低く,藻類はアカシボ初期には少ないと思われる。アカシボにはDOCも多い傾向にあり最大で400mgC m^<-2>であった。同じくNaイオン(600mg m^<-2>)もアカシボ発生付近で高くなっていた。一方TICはSSとDOCの高い地点とはやや異なった分布を示した。雪の酸素同位体比(δ^<18>O)は周辺部分(-12‰)よりアカシボの中心で重くなっており(-10‰),周辺部の雪解け水が一度泥炭層に潜り込み,間隙水・地下水が上昇してきたと考えられる。そのため,DOC,Naなどが高いものと考えられた。また,アカシボの雪原には窪地に大小の穴があり,流出河川側に分布していることから穴は雪解け水の逆流でできた可能性がある。以上の結果から積雪1m程度になると湿原周囲の雪解け水が地下からわき上がり,細かく分解された泥炭と生物群集が一時的に噴出して広がり酸化され,その後日射で周囲より早く解け窪地ができるものと思われる。その後,藻類や底生生物の増殖・集合を伴いながら赤雪が解けていくと思われる。
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