Research Abstract |
わが国の一般廃棄物は,容器包装リサイクル法施行などにより家庭由来のごみ中の食品残渣(厨芥類)の比率が高まることから,厨芥類の中間処理または代替処理が今後必要となると予測される。国あるいは地方自治体が,廃棄物処理政策を決定する上では,経済性と並んで,処理そのものによる環境影響を最小化する努力が求められる。そこで,本研究では廃棄物の中でも特に食品残渣に着目し,現行の処理方式と循環処理過程(メタン発酵,堆肥化および農地還元)を取り入れた処理方式合計4つのシナリオ,収集,焼却,メタン発酵,堆肥化,搬出,埋立,農地還元の7つのプロセスを対象にしてライフサイクルアセスメントを行い,環境影響の比較を行った。影響項目は,温暖化ガスの発生に伴う地球温暖化の他,酸性物質の発生による大気の酸性化,廃棄物発生量により決定される埋立地消費,有害物質(重金属およびダイオキシン類)の発生量とし,これら4項目の統合評価についてもあわせて行った。その結果,収集,焼却,搬出,埋立という現行の処理方式は,総じて環境に対する影響が高いとの結果が得られた。地球温暖化について見ると堆肥化シナリオが最も悪い影響を及ぼすことが予測され,最も影響の小さいのはメタン発酵・堆肥化シナリオであった。各プロセスで見ると,焼却,堆肥化,農地還元の影響が大きく,メタン発酵はその影響を低減する効果を有した。また,その他の環境影響を考慮した場合も,メタン発酵過程を含むシナリオは他と比べて環境の影響が低く,食品残渣の中間処理としてメタン発酵過程を用いることは環境負荷低減に貢献できるものであることが明らかとなった。
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