2000 Fiscal Year Annual Research Report
持続的環境利用システムとしての市場・政府・コモンズに関する比較研究
Project/Area Number |
10680547
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松岡 俊二 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (00211566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 礼史 東亜大学, 総合人間文化学部, 助教授 (50294608)
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Keywords | 持続的環境利用 / コモンズ / 取引費用 / 制度設計 / 不確実性 / フリーライダー / 大気環境管理 |
Research Abstract |
今年度は、過去2年間の研究成果を踏まえ、最終年度におけるまとめを行うため、大気環境資源を事例とし、環境規制と経済主体の自発的な環境管理行動との関係を明らかにすることを目的に研究を行った。 排出基準に基づく直接規制は、分権的に使用され一律でない排出基準が適用されるとき、静学的にも動学的にも効率的になる可能性を有している。ただし、こうした一律でない排出基準は、規制の公平性を損なう可能性が大きいという問題点もある。また、こうした可能性を具体化するためには、分権的な規制実施と同時に、規制機関が汚染の状況と汚染者を把握している必要があり、高い組織的・技術的能力と財政資金的裏付けが前提となる。 一方、市場的手法の1つである排出課徴金制度は静学的効率性を達成できるが、環境目標を達成するのは難しく、動学的効率性という点でも必ずしも優れているとは言えない。また、モニタリング費用などの規制実施費用は直接規制以上である可能性がある。しかし、実際の運用が直接規制の強化と並行してなされると、効率的に環境改善がすすみうる。 また、今日では、直接規制と市場的手法だけでなく、情報公開や環境会計の導入などによる企業行動への自主的・ボランティア的手段も用いられている。こうした手段は効率性という点で優れている。 以上の研究から、以下のような結論を得た。市場システム、政府システム、コモンズ・システムという3つのシステムのうち、効率性という点ではコモンズ・システムが優れているが、公平性は政府システムが優れている。このようにこれらのシステムは単独ではうまく機能しないため、3つを組み合わせた複合型規制が有効である。ただ、これらの中で、従来は政府システムの割合が大きかったので、今後は市場システムやコモンズ・システムの活用が重要となってくる。
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[Publications] Kochi.I & Matsuoka.S et al.: "Cost Benefit Analysis of the Sulfur Dioxide Emissions Control Policy in Japan"Environmental Economics and Policy Studies. (発表予定). (2001)
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[Publications] 松岡俊二: "途上国における環境政策の効率的実施とは何か?-規制の諸手段と効率性-"国際開発研究. 9・2. 17-37 (2000)
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[Publications] Shunji MATSUOKA,Reishi MATSUMOTO,Ikuho KOCHI,: "Comparative Studies on Social Capability for Environmental Management in East Asia"ICSEAD Working Paper Series. 2000・12. 1-65 (2000)
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[Publications] 松岡俊二: "環境クズネッツ曲線を左右する途上国の環境管理能力"国際開発ジャーナル. 2000・6. 63-63 (2000)
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[Publications] 松岡俊二,村上一真,松本礼史: "アジア諸国の経済成長とCO_2排出構造の変化"国際協力研究誌. 6・1. 75-89 (2000)
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[Publications] 松本礼史,松岡俊二,岡田博己,河内幾帆: "企業の公害対策行動に関する経済分析"国際協力研究誌. 6・1. 91-103 (2000)
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[Publications] 松岡俊二,渡里司,松本礼史,白川博章: "持続性からみた日本の森林資源利用:持続的環境管理システムとしての市場・国家・コモンズの検討を中心に"国際協力研究誌. 6・1. 1-22 (2000)
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[Publications] 松岡俊二,松本礼史,盧峻: "途上国における環境政策の効率的実施に関する研究:中国・排汚収費制度を事例に"国際開発学会第11回全国大会報告論文集. 11. 33-38 (2000)