1998 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞アポトーシスにおけるアラキドン酸カスケードの役割
Project/Area Number |
10680580
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
樋口 善博 金沢大学, 医学部, 助手 (10019630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 谷博 金沢大学, 医学部, 教授 (60127876)
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Keywords | グリア細胞 / グルタミン酸 / グルタチオン / 巨大DNA断片化 / アポトーシス / アラキドン酸 / 活性酸素 / 脂質過酸化 |
Research Abstract |
高濃度のグルタミン酸はグリア細胞腫(C6ラットグリオーマ)に対しシスチンの膜輸送を阻害し、細胞内システインさらにグルタチオン(GSH)の濃度低下をもたらすことでアポトーシスを引き起こす。本研究では、神経系細胞であるC6細胞を用いてこのアポトーシスの過程で、細胞内脂質過酸化との1-2 Mbpおよび200-800 kbpの染色体DNA断片化との関係、および不飽和脂肪酸の特にアラキドン酸のこれらDNA断片化に及ぼす影響を調べた。C6細胞を10mMのグルタミン酸で処理すると、細胞内還元型GSHの減少とともに、過酸化脂質が増大し、染色体DNAで1-2 Mbpおよび100-800 kbpサイズのDNA断片が形成され細胞死に至った。この系に、アラキドン酸を添加すると細胞内の脂質過酸化は著しく増加し、また1-2 Mbpの巨大DNA断片化も増大かつ促進した。リノレン酸、リノール酸でもその促進効果は認められ、オレイン酸ではその作用は弱く高濃度では逆に抑制した。アラキドン酸を含むこれら不飽和脂肪酸による脂質過酸化及びそれに起因する巨大DNA断片化は、抗酸化剤、OHラジカルおよび脂質ラジカルスキャベンジャー、さらにFe/Cuイオンキレーターによって抑制された。以上の実験結果から、グルタミン酸によってC6グリア細胞腫は、過酸化物の消去に働く細胞内GSHが枯渇することで、細胞内で代謝的に産生したO_2^-もしくはH_2O_2がFeイオンやCuイオンによるフェントン反応によってOHラジカルになり、生じたOHラジカルがアラキドン酸を含む脂質のラジカル連鎖反応による過酸化を引き起こし、その結果巨大DNAの断片化を伴う細胞死に至る、という機構が考えられる。本研究により、GSH枯渇による神経系C6細胞死にアラキドン酸が一部関与していることが示唆されたが、アラキドン酸代謝に関わる酵素種については現在検討中である。
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