2000 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞アポトーシスにおけるアラキドン酸カスケードの役割
Project/Area Number |
10680580
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
樋口 善博 金沢大学, 医学部, 助手 (10019630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 谷博 金沢大学, 医学部, 教授 (60127876)
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Keywords | アラキドン酸 / 脂質過酸化 / グルタミン酸 / グルタチオン / カスパーゼ-3 / リポオキシゲナーゼ / ネクローシス / アポトーシス |
Research Abstract |
ラットグリア細胞腫はグルタミン酸によるグルタチオン(GSH)の減少によってアポトーシスが引き起こされることをこれまでに報告してきたが,このGSHの枯渇下によるアポトーシスの過程で,本年度は,細胞死に関与する細胞内諸生理活性物質の動態調べることで不飽和脂肪酸とくにアラキドン酸のアポトーシスにおよぼす効果を検討した。C6細胞を10mMのグルタミン酸やGSH合成阻害剤であるブチオニンスルフォキシミン(BSO)で処理すると,細胞内GSHの減少とともに過酸化脂質が蓄積した。この系に,50-100μMのアラキドン酸を添加すると細胞内の脂質過酸化は著しく増大し,12-リポオキシゲナーゼの活性上昇とタンパク量の増加が認められたが。それと共にカスパーゼ-3活性の低下,細胞内ATPの減少,ミトコンドリア膜電位の低下が観察された。染色体DNAのラダー様断片化は消失し,逆に1-2Mbpの巨大DNA断片は増加した。さらに核DNAでは酸化反応による8-hydroxy-2-deoxyguanosine産生の増加が認められアラキドン酸によって活性酸素の発生増加が明らかになった。以上の結果から,C6グリア細胞腫はグルタミン酸もしくはBSOによってGSHが枯渇すると,細胞内活性酸素が増え,またアラキドン酸を基質とする12-リポオキシゲナーゼによる代謝過酸化物が蓄積し,それが引き金となってラジカル脂質過酸化連鎖反応が進行し,そのことでミトコンドリア膜や細胞膜強度が低下し同時にアポトーシス関連酵素の失活もしくは減少を来たす。また一方でDNAの酸化反応を引き起こしながらネクローシス様の細胞死を誘導増進する。GSH枯渇によるグリア細胞死機構の中でこのようなアラキドン酸の役割が示唆された。
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